管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「恨み」が生み出すパワーは非常に強力です



同じ屋根の下に住んでますからね。怖いですよ。


小泉総理の時の「郵政民営化」。
「国民には迷惑をかけない」と言ってましたが、実際は、「近所にあったポストがなくなった」「”コンビニのローソンにポストを置くのでそれを使って欲しい”と言ってたが、そのローソンがつぶれた」「ポストの回収の最終時刻がなんと午後2時に繰り上げられた」などなど、いまだに「本社との間の連絡手段で郵便を多用する現場」で働く身としては、不便でしょうがないです。
さて、小泉といえば、郵政のこと以外には興味がなく、竹中平蔵を重用することによって、日本経済や労働形態を崩壊させた重罪人と言えるでしょう。いっぽう、その「郵政」に対するこだわりの強さはものすごかったです。

うちのカミさんいわく、「あの人、郵政省の職員(女性)に振られたから、その恨みでやってんじゃないの?」とのことで。私も、「女性問題」かどうかわかりませんが、なんらかの「郵政」に関する「個人的な恨み」でやってるとしか思えませんでした。政治家というのは「ちゃんとした思想」がない場合、損得だけで動きますが、郵政民営化で小泉が大きな利益を得ることもないと思われますし、そうなると、あれだけのパワーを生み出したのは、なんらかの
「恨み」だと思っています。

「恋の力」も甚大ですが、
「恨み」の力も甚大なのです。



さて、話を、マンション管理組合に移します。そろそろ各地のマンションで総会の季節になってきました。総会に関しての「恨み」のお話をします。




一般の住民にとって、「総会」というのは「議案に関して議論をして結論を出す場」というイメージかもしれませんが、実は、管理組合の運営を考えると、総会というのは議論の場ではなく、「結論を追認する場」というのが実態です。

議論は、その議案を総会に上程するまでの間に行なうものであり、議案として総会資料に載った時点で「議論は済んだもの」ということになります。

きちんとした管理組合であれば、正式な議案になる前に、「積極的な広報・情報公開を行ない、住民に広く正確に伝えている」「住民アンケートを実施し意見を伺う」「”意見のある人は理事会に出席して発言して下さい”として出席を求めている」「賃貸入居者に関連するものは、賃貸入居者にも情報を伝え、意見をもらう体制にしている」・・・・などの行程を整備しているはずですから、総会の場で議論することはないはずです。
また、現実問題として、「総会に実際に出席する組合員」というのは非常に少ない人数になり(半数以上が出席することはまずないです)、他の組合員からは事前に「議長への委任状(議長=理事長にお任せします  つまり 全議案賛成ということ)」や「議決権行使書」によって、総会開催前に意見が出ています。議案内容にもよりますが、普通決議(過半数の賛成で議決)であれば、たとえ、総会に出席した組合員全員が反対票を投じたとしても、議案が否決されることはないのです。なので、私は「追認する場」と表現しております。

となると、管理会社や理事会としては、「総会の場で、議論しても、何の意味もない。みんな賛成してくれて早く終わらせましょう」という考えになります。
しかし・・・・
「総会というのは議論の場である」と考えている組合員は少なからずいるわけで、いまさら何を言っても、ひっくり返らないのに、「俺は反対だ!」と長々と持論を発言する人がいるのです。

こういう人は、「反対するためにわざわざ出席」していますから、意見を言わせない、というのもだめです。ある程度はしゃべらせないと本人は納得しません。それなのに、議長が「議決権行使書で、すでに過半数の賛成を得ているので、何を言っても無駄ですよ」なんてことを言っちゃうと、怒ります。
また、こういう反対意見を言う人は、実は日頃の管理組合運営に無関心だったりするわけで、かつ、管理規約とか細則もろくに読んでいない人だったりします。そういう人に対して、「なんで、今頃になって意見を言い出すんだ。意見があるならもっと前に言えよ」とか「それ、管理規約に違反してるぞ」なんて指摘をしちゃうと、指摘をしたほうは「正しい論理で相手を論破した」とえばるかもしれませんが、打ち負かされたほうは「みんなの前でメンツが丸つぶれだ。恥をかかされた」と感じるわけでして。
最悪なのは、理事長と口喧嘩になったりして、どっちも感情的になってしまうと、収拾がつきません。そして、そういう諍いは後を引きます。

こういうトラブルが原因で「恨み」に発展すると始末が悪いです。実際問題、その後、「理事長の家に深夜、ピンポンダッシュする奴が現れた」とか「理事長の娘に、”ブス 死ね!”と言い放つやつがいた」とか「理事長の部屋のポストに”馬鹿野郎”と書かれた紙が入れられた」とか「理事長の自転車がパンクさせられた」など、そういう事態が起きています。

議案を考えたのは、理事全員と管理会社であるわけですが、「理事長が悪い」という「個人的な恨み」になってしまうのです。そして、こういう恨みはその後何年も続くのです。

総会での進行を議長は行わず、実質の進行を管理会社がやってしまう例もあります。この場合、「恨み」の対象は管理会社になります。こうやって、いったん「管理会社に恨みを持ってしまう」と、これも難物です。なにしろ、管理組合というのは「輪番で役員になる」ものですから、その「恨みを持った住民」が役員になることも実際にあるのです。
こうなると、その人が役員になった期の理事会は、その役員が毎回出席し、「とにかく管理会社がやることにいちゃもんをつけまくる」という会議になります。「恨み」がエネルギーになり、「恨みを晴らすために理事会に出席する」わけですから、そりゃ、言いたい放題、かき回し放題です。理事会では、大声を上げる役員の声にひっぱられることが多いですから、この人一人で、好き勝手できます。本当は、管理会社がちゃんと動けないと、住民みんなに迷惑がかかるのですが、そういう人はそんなことは考えず、とにかく、自分の恨みを晴らすことだけに集中します。

また、恨みの発生は「総会」の場ではなく、日常に転がっています。それこそ、「マンション内をくわえタバコしていて、管理人に注意を受けた」「飼い犬の鳴き声がうるさくて、理事会から注意を受けた」なんてことだけでも、「この恨み、晴らせでおくべきか」と強い恨みを抱く人がいます。本当は自分が悪いのですが、そんなことは関係ないのです。

そういう人が、「管理組合が掲示板に”生活騒音に注意しましょう”と貼ったもの」に、”うるさい、馬鹿野郎!”と落書きしたりします。玄関ホールのような目立つところに、犬の糞をさせたりします。「自分の住んでいるマンションの価値を下げている」ことなんですが、そんなのは関係なく、ただ、恨みを晴らしたいだけなんです。

外の道で歩いている時に、「ここは喫煙禁止区域ですよ。タバコは吸えませんよ」と注意するのはいいんですが、言われる相手もマンション住民というのは、「同じ屋根の下に住む人に注意をする」ということで、身近なせいか、余計に激しく恨みを買うようです。

「その恨みのパワーを、もっと他のことに使えよなあ」と思うのですが、そういう人は、建設的なことに努力はしません。

今、どこのマンションでも防犯カメラが普及して、マンション内の迷惑行為の犯人をすぐに探せるようになりました。これはいいことでもありますが、その犯人がマンション内住民だった場合、処遇に困るのです。「あなたがやったこと、カメラにばっちり写ってますよ」と、完全な証拠を提示して罪を認めさせようとすると、ほぼ確実に恨みを買います。カメラ映像を調べるのも良し悪しなんです。そういうのを一回経験すると「犯人が住民だった場合のことを考えると怖いから、映像を見るのはやめよう」という姿勢になる管理組合もあります。でも、こうなると、「カメラがあってもここの管理組合は調査をしない。だから悪いことをやっても大丈夫」と思う悪いやつがいるもんで・・・・・

これは実体験で話してますが、ほんと、「恨み」って怖いです。


※「恨み」の対象が「理事長」とかの「個人」になると、報復行動が起きやすくなります。ですから、なるべく、「管理組合全体」とか「管理会社という組織」とか、団体になるようにしたほうがいいです。


ほんと、「同じ屋根の下」で住むってことは大変なことです。「恨み」のパワーってすごいですからね。いろいろと気を使います。