管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
駐車場の台数を増やすための禁じ手 |
年数を経過して、住民の高齢化が進んでくると、「自動車に乗る人が減る」という現象が起きます。
また、「昔、駐車場料金が高かった時代に建設されたマンション」が、地価が下がっても、そのままの高水準の駐車場料金を維持したために、利用者が減少し、「駐車場の空き」が発生することもあります。
今回の話題の主人公のAマンション。全部で30台の屋外&平置きの駐車場があります。20台分のブロックと10台分のブロックの2ケ所に別れています。
話の始まりは「3年前」のことです。
「駐車場の料金が高いこと」もあって、2台分の空きが生じており、「駐車場料金収入が減って困る」という問題になりました。(よくある話です)
また、現在利用している住民からも、よく、「高いよ。周辺相場よりも高いじゃないか。せめて、周辺相場に合わせるべきだよ」という意見が出ており・・・・
役員の中にも駐車場利用者が多く、「値下げ案」へ賛同する人が多数を占めました。そのため、その年度の総会で、「駐車場料金を2割下げる」という議案が可決されました。
2割下がった結果、新たな利用希望者が現れ、2台分の空きは埋まりました。
しかし、2割値下げしたため、満杯になったとしても、駐車場収入の総額は減りました。
そこで翌年度の理事会では、あれこれ考えた結果、禁じ手と言ってもいい、「駐車場1台あたりの区画の幅を狭めて、全体の台数を増やそう」という方法を、ある一人の役員が考えつきました。
20台分のブロックのほうだけなんですが、「1台あたり10センチずつ狭めて」、新たに1台分の駐車場(計21台)を生み出そうというのです。
この年の役員は、主要メンバーの中に「駐車場利用者」が不在で、「車のことをよくわかっていない人ばかり」でした。「10センチくらい大丈夫だろう」と安易に考えました。区画の変更というのは、当事者の役員は、「白線を引き直すだけだろう」「だったら、安く工事ができるだろう」と思って発案したようですが、長い期間持つ、高品質な白線を引くことは意外と高価ですし、その前に、従来の白線を消すことも費用がかかります。さらに、各区画ごとに2個ある「車輪止め」のコンクリートブロックを移動させることも、けっこうコストがかかります。そのうえ、工事には2日間かかるため、その間、20台の車を一時移動しなくてはいけません。これに関わる手間やコインパーキングの費用も馬鹿になりません。
コスト計算をすると、「1台増やすためだけに、これだけの工事をするとなると、コストを回収するためには5年以上かかる」というものでした。
でも、その年の理事会は、その案を議案にして議決させました。
そうやって、区画を一個増やす工事が行われましたが・・・・・
「幅が狭くなったことで、駐車場の出入りの際に、運転の下手な人が隣の車にぶつけてしまった」
「強風の日に、車のドアを開けた際、風に煽られてドアが突然全開し、隣の車のドアを傷つけた」
なんてことが頻発するようになりました。そう、「駐車場の幅が10センチ狭くなる」というのは意外に弊害が大きいのです。こういうのは、日頃車に載っていない「役員」にはわからない感覚だったのです。
さらに、もうひとつの「10台分」のほうのブロックは、幅の変更をしなかったため、「従来どおりのところと、狭くなったところと、同じ、駐車場料金なのはおかしくないか?」「不平等だ!」という苦情が多数来ました。
そして、何より決定的なのは、「1台分増やしたけど、利用希望者がいなくて、埋まらなかった」という「計算違い」が起きたことです。多額の費用をかけたのに、効果が一切なかったのです。「1台増やそう」と考えた理事会が、ろくに希望者調査もしなかったことが原因です。
ということで、「1台分増やしたこと」に関しては、苦情殺到になりまして・・・・
なんとなんと、今年の総会では、「昨年決めた、1台分増台させる案を取り消してもとに戻す」という議案が可決されました。
その時の役員としたら、「自分たちが決めたことではない件で非難されるのは嫌だ」「だったら、元に戻してしまえ」ということです。
元に戻すのはいいですが、これもまた多額の費用がかかるわけでして・・・・・
結局、無駄な工事を2回することになり、莫大な損失を生んだだけでした。
アホな役員のせいで、こういうことが起きます。みなさんも気をつけましょう。