管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

専門委員会・特別委員会
理事会にかける圧力

2020/5







困ったもんだな


 うちのマンションみたいに、年数が経過した古いマンションでは、その年数に比例して、「理事長経験者」が多数います。もう、二桁を超えています。

 どの理事長も、ろくに働かない、ぐうたら理事長ばかりなのですが、ぐうたらだった人ほど、理事長をやめたあとに、「オレは元理事長だ」という「圧」を強く出してくる気がします。



 つい先日も、元理事長が管理室に電話をかけてきて、「今日の午後、東京から知り合いがここに遊びにやってくる。車で来るから、マンションの中に駐車させてやってくれ」といきなり言ってきました。
「いや、うちには来客用駐車場はないですよ。それは***さんもご存知ですよね」
「何言ってるんだ。オレは元理事長だぞ。それくらい優遇しろ」
「いやいや、そんなことできないですよ」
「馬鹿野郎。オレは元理事長だぞ・・・・・」
といった会話がありました。なんか、当然のように、「過去に理事長を務めると、なにかしらの特権が与えられる」と思いこんでいるようです。

特に、定年になって暇になった元理事長が、急に、あれこれと口出しをするようになって、「元理事長の俺が言ってるんだから(無条件に)従え!」みたいな態度で押し込んでくるときがあります。これにも困っています。


さて、話を本題に移しますが。

マンションの中には「理事会」という組織がありますが、たいていのマンションでは「1年任期 輪番制で毎年全員入れ替わり」ということになっており、「翌年には全員別の人になっているから、去年のことはよくわからない」ということで、「短期間の議題」であれば問題はないですが、「駐車場不足をどう解決するか?」「駐車場余りをどう解決するか?」「ペット問題」「修繕積立金会計の財源不足」・・・など、数年間かけて取り組むような大きな問題には対応がしにくいです。

特に「大規模修繕工事」というのは、準備〜計画〜工事実施〜アフター点検など、最低でも3年はかかります。単年度の理事会ではなかなか対応しにくい性質の案件です。(5年アフター点検なんていうものもあるため、そこまで考えると9年くらいの長丁場です)

というわけで、そういう「長期的な案件」に対応するため、理事会とは別に「専門委員会」とか「特別委員会」といった「別組織」を作ることがよくあります。


「大規模修繕委員会」に関しては、かなりの確率で結成されているのではないでしょうか?
(大規模修繕工事会社の「カシワバラ」のテレビCMでも、「大規模修繕修繕工事委員会」が主人公になっています)

大規模修繕委員会を結成するのは、だいたい、築年8年くらいたってからなので、この頃には、「理事長経験者」も7〜8人いることになります。そういう「理事長経験者」とか「建築工事の専門知識がある人」などを委員になってもらって組織化することが多いです。

さて、そうやって生まれた「大規模修繕工事委員会」ですが、普通は、「大規模修繕工事」が完了すると、「では、いったん解散です。1年後アフターの時と5年後アフターの時には再結成していただきますが、それまでは活動停止ということでお願いします」という感じでいくはずです。

しかし、「大規模修繕工事委員会」の中には、「理事長経験者」が多いこともあり、この組織が、活動休止したあとでも「圧力団体」みたいな組織になる場合があります。以下に、私のもとに寄せられた、別のマンションの住民からの「相談」の事例を記します。

総会の場で、根回しもなく、突然、挙手をして、「私は大規模修繕工事委員会の会長をやっていた高橋だ。4年前には理事長もやっている。この、「駐輪場を増設する」という議案には私は反対だ。大規模修繕工事委員会としても許すことはできない。現理事会には、この議案の撤回を求めたい」とか言い出しました。この議案は、事前に集めた「議決権行使書」の賛成票の数だけで、賛成が8割を超え、総会開催前にすでに「可決」が決まっていて、この場で、この高橋さんが反対しても、数的には意味はなく、「可決」なんですが、「元理事長」「大規模修繕工事委員会会長」とかの「圧力」(&不遜な態度)はかなり大きく感じられるようで、議長である理事長が、あたふたしてしまい・・・・・・

「いや、あの、〜〜〜 この議案は、あくまでも、この工事を実施するための予算を認めてもらうための議案でして、けして、この工事を実施するというわけではないのです」とか、メチャクチャなことを言い出して、事実上の「ちゃぶ台返し」を行ない、「予算は承認していただきますが、工事自体は中止します」と口を滑らせ、「駐輪場増設工事」が中止になってしまいました。

この件、あとでこんなことが判明しました。
この「駐輪場増設工事」が行われる場所(現在は、土の空き地)が、この高橋さんが無断で、「自分のチューリップを植えている場所」(管理規約的には当然、違反)だったため、自分のことだけを考えて反対した。
高橋氏は「大規模修繕工事委員会として反対だ」と発言したが、実は他の委員には何も意見は聞いておらず、勝手にその場で「委員会として反対だ」と嘘をついていた。つまり、「ハッタリ」だった。

ハッタリは忍者だけにしてもらいたいもんですな。

別の例では、これは「大規模修繕工事委員会」が現役で活動している時の話ですが、
この委員会の委員5名のうちの3名が「駐車場利用者」だったことで、委員会の中で、「マンション内に、洗車場を作ろう」(場所も新たに作らないといけないし、水道も新たに引いてこないといけない大工事)と言い出しました。その当時の理事会で、この案が話し合われた時は、「新しく場所を用意して洗車場を作るのは無理でしょう。他の住民のコンセンサスが得られないですよ。やめましょう」と決定したのに、委員会のほうで「大規模修繕工事のことは俺たちに一任されているんだ。理事会が口を出すな」と反抗し、結局、無理やり、「洗車場造成」が決められて、実際に工事が行われた。


こういうのって、よくある話で、「理事会と専門委員会の立場がちゃんと決められていない」ことにより発生します。本来は、「専門委員会はあくまでも参考意見を述べるだけであり、決定権はない。決定をするのは理事会である」といったルールをあらかじめ決めておかないといけません。そういう「立場の上下関係」はしっかりしておくべきなんです。
しかし、専門委員会を結成してもらう際の説得&要請で、理事会側が譲歩して、「どうぞ、そちらでご自由に」とか「口約束」をしてしまうことはよくあることで、それがあとあと、こういう事態につながるのです。
「軒先貸したら母屋を取られる」っていうのは、専門委員会の問題ではよくあることです。

また、一度結成された「特別委員会」や「専門委員会」をどのように解散させるかも問題です。このような「圧力団体として居残る」例もあるため、「解散権は理事会側にある」と決めておいて、必要性がなくなったら、解散させることも大事なことです。そういう決まりがないと、「いったん作ったものは、俺たち自らが解散を言い出さない限り、存在するんだ」などと居座るケースもあります。おまけに、そういう人たちは、「今度***委員会を開催するが、ファミレスでやるので、その飲食代を管理組合で出せ」とか要求するケースもあります。ひどいのになると、「そういう無銭飲食のために専門委員会を残存させているところもあります。

それからこんな例もあります。

その当時の理事会が、欠席者ばかりでろくろく機能せず、そのため、側からの要請により、過去の理事長経験者5名により、「経験者として、理事会活動に適宜アドバイスをするため」という設立趣旨で「特別委員会」が構成されました。しかし、理事長経験者といっても、その実態は「やる気なし」「頭が悪い」「わがまま」「くじ運が悪い」・・・といった能無し男ばかりで。(七人の侍みたいに傑出した侍が集まったわけではない)
会議を開いても、我の強い人ばかりのため、喧嘩になってしまい。一人抜け、二人抜け・・・・そして、自然と解散・・・・となれば、まだましなのに、「一番わがままな人」が一人だけ残ってしまい、その人ひとりしかいないのに、「自分は特別委員会の会長だ」と言い張り、理事会のやることなすこと、管理組合のやることなすことに、いちゃもんをつけ始めるようになったのです。一人圧力団体です。
一人なんだけど、肩書は「特別委員会会長」のため、その名前で意見を言われると、無視することもできず。。。。。

理事会としては「面倒なことを過去の理事長に押し付けよう」と思って、結成をお願いしたものの、現実的には、「目の上のたんこぶ」みたいなのを自ら作り出してしまったわけで、こりゃあ、たまりません。本当は、その人個人の意見なのに、それが「特別委員会としての総意である」なんて説明で発言されると、やりにくいです。


というわけで、専門委員会や特別委員会を作る際は、十分気をつけて、将来、こういうことになることまで考えて、作りましょう。

というアドバイスでした。

<追記>
管理会社のフロント社員からの意見としては、「毎月一回の理事会出席だけでも大変なのに、それに加えて、専門委員会にまで出席を求められるのは苦痛です」というものがあります。
なので、専門委員会の集まりを開催する際は、「同じ会場で、理事会の開催前に、専門委員会を開催する」とか、フロントが出向く回数が増えないようにすることがベターです。専門委員会が別日程で、かつ、活発に行われると、ほんと、フロントは大変になりますから、そのへんもご配慮下さい。