管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

管理委託費のステルス値上げ
管理人有給休暇取得時に代行員派遣なし

2022/2




金額は変えないけど実質値上げ


マンション管理会社が管理組合さんに対して「管理委託費の値上げ」を要望するケースが増えています。

この要望に管理組合が拒否すると、「じゃあ、いいです〜!」と、エアペイのCMに出てくるイタリア人みたいに、委託契約を解除して去っていく管理会社もいますが、いきなり解除というのも乱暴なので、ステルス値上げでなんとかするケースがあります。



ある管理会社では、こんなステルス値上げをしています。

管理人の勤務形態に関してなんですが、今まで、「管理人が有給休暇を取って休む場合」(※管理人は高齢者が多く持病も抱えているので、通院などで休むことは多い)は、その管理人の代わりに管理会社から「代行要員」を派遣して、仕事をさせる契約になっていました。これ、別の人を派遣するわけですから、それなりの経費がかかります。

そこで、
「今後、管理人が法定有給休暇を取得する場合は代行要員を派遣しません」という変更を行なったのです。
外見的な「管理委託費」の値上げはしない代わりに、事実上の「管理人の勤務日数の削減」を行なったわけです。
管理会社としては、代行要員派遣経費が削減できるので、実質上の「委託費値上げ」と同じです。
管理組合としては、組合員に提示する「管理委託費」は値上げしませんから、組合員からの反対もほとんどなく、楽です。「有給休暇を取ります」という文だけでは、一般住民も反対する人はいませんし。

というわけで、この管理会社では、「委託費値上げを飲んでくれない管理組合」、「でも、契約は続けたいと思っている管理組合」に対しては、妥協案として、この方法をとっているようです。

というわけで、そのマンションでは、管理人さんは年間10日の有給休暇を取る際に、「代行員が来ない」ということになりました。

これ、契約更改当初は「たいした影響はないだろう」と、みんなが思っていたのですが、実際はそこそこの影響があったようです。
というのも、そこの管理人さん、「仕事がすごく大変な日を選んで、その日に有給休暇を取る」という作戦に出まして。
例えば「月に一回開催される、地元町内会主催の資源ごみ集団回収の日」とかに休むわけです。今までは、これに管理人が関わって、すごく大変な仕事をしていたわけです。
まあ、これ、労働者の本音として、私も理解できます。大変な日に休むほうが有休の有効活用になりますからね。

これで困ったのはマンション住民のほうでして。「管理人さんがいないと困る」という状況の日に限って、管理人がいないのですから、「なんでいないんだよ!」と苦情が出ました。

ということで、このシステムで1年が経過したあと、次年度の契約更改の際には、文書ではないものの、「仕事が大変な日に有給を取得する時は代行員をなるべく手配するようにしてくださいよ」という要望を管理会社に口頭で伝えたそうです。

ステルス値上げもなかなか難しいですな。素直に委託費値上げを飲むほうがいいかもしれませんね。