管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
あとになってすごく役に立つこともある「デジカメ写真」 とにかく、たくさん、頻繁に、高画素で撮れ |
マンション管理人を長くやればやるほど、実感すること。
「あの時に、デジカメで記録をしておいて、ほんとに良かった」
これ、マジでしょっちゅう思うことです。
私の場合、スマホは使いこなせないし、安物スマホで、記憶容量も小さいため使いませんが、デジカメを常に携帯して、なにかあるごとに、いや、なにもなくても、とにかく写真を撮りまくっています。
(※カメラは安物でもかまいませんが、広角側がなるべく広いレンズのものを選んでいます。室内の写真とかもあるので、広角が広いと助かるのです)
なんたって、「管理費等の督促状を、該当住民のポストに投函する場面」も、デジカメで撮っています。「受け取ってない」「見たことない」とか言われた際に、「ちゃんと、あなたのポストにこの封書を入れましたよ」と、証拠を見せるためです。
愛読者の皆さんは、私がことあるごとに、「常にデジカメを携帯しろ」「なにかあったらすぐに写真を撮れ」と言っていることをご存知だと思いますが、いろいろ経験してくると、実は、「なにかあったら」ではなく、「何もなくても撮れ」って思うのです。
これって、なかなかすぐには理解してもらえないと思いますが、例えば、東日本大震災のあとで、緊急建物点検をした際に、日頃の巡回とかで見ないような目立たない箇所で「あそこにヒビを発見したが、あれは、震災後にできたものか? それとも、震災前からあったものか?」なんてことが問題になったりすることがあります。
こういう時に、その場所を震災前に撮影した写真があるかどうか? が、すごく重要になります。
この種のことは、人間の記憶などいい加減ですし、文書なんか財務省だって平気で改竄するくらいですから、とにかく、証拠能力のあるものは「写真」なのです。
しかし、そんな「目立たない」「日頃気にしていない」「そこでなにも特記事項が起きていない」という場所って、普通は写真に撮らず、過去の写真は存在しない、というのが一般的です。
そこで、最低でも「年に一回」とかでもいいので、「マンション内のあらゆるものをとにかく写真に撮りまくる」という日を作って、撮りまくるんです。
うちみたいな大きなマンションでは、管理人一人ではしんどい仕事なので、管理組合役員が複数名でやるといいと思います。できれば、5〜6人で撮りまくるのです。
ちょっとした「探検」みたいに「屋上」とか「エレベーター機械室」とか「地下ピット」など、ふだん行かないところに撮影に行くと、マンションの設備に関する知識も増えて、良いと思います。
写真を撮るというのは、被写体を凝視することでもありますから、カメラを向けた際に、「あれ、今まで気が付かなかったけど、あそこにクラックがあるぞ」というのも発見するかもしれません。
総会が終了して、輪番制で、全員新しい役員に変わって、理事会が新体制でスタートする時なんかに、大勢の役員で写真を撮りまくる「ツアー」を、「新役員の最初の仕事」として恒例行事にしておくといいのではないでしょうか?
かなりのデータ量になるとは思いますが、今は、パソコンのHDDの容量もかなり大きくなっていますから、問題なく、保管できるはずです。
なお、この時に、「たいした写真じゃないから、低画素(200万画素とか)にして、データ量を少なくしよう」なんてことを、「記録メディアが高額だった時代の記憶がある人」が思いがちですが、「画素数」は常に「最大」で撮っておくことをおすすめします。
今の機種であれば、「2400万画素」とかになっていると思いますが、その「最高画素数」で常に記録しましょう。その時は「無駄じゃないの?」と思うかもしれませんが、最高画素で撮っておくと、あとから「拡大して見る」ことが可能なので役立つことが多々あるのです。
長年マンション管理をやっていると、「特に意味もなく撮った1枚の写真が、数年後にものすごく役に立った」といったことはいっぱい起きます。
7年前の秋の紅葉の頃に「落ち葉がきれいだな」と思って、裏庭の様子を写真に撮ったのをあとから拡大して見たら、成長した根っこのせいで、地中に埋設してある水道管の一部が地面に露出しているのがわかり、それはその後、管が破裂して噴水になったんですが、「7年前にはすでに危険な状態だった」ということがわかりました。
また、
「誰がその時に来たか、名前は覚えてますか?」「いやあ、そこまでは記録してないです」となって、何気なく撮っていた、その工事の作業中の写真をよく見たら、その時のスタッフの名札が写っており、「高橋って人が来たんですよ」「あ〜、高橋ですか。わかりました、それじゃあ、本人に聞いてみます」と、話がスムーズに進んだり。
また、犯罪関係で、「植栽部分にあじさいが咲いていたのがきれいなので写真を撮っておいた」ら、その写真の中に、「その時にやってきていた、訪問詐欺商法の犯人」が偶然写り込んでいて、写真を拡大したら、顔がはっきりわかり、犯人逮捕につながった、なんてことも実際に起きています。今は防犯ビデオが普及していますが、ビデオ映像って、1ヶ月くらいで消去してしまいますが、写真はほぼ永久保存なので、「半年前に起きた犯罪」なんかも調べることができるんです。
とにかく、長年ずっとデジカメ写真を撮っていると、「5年前のあの写真が役立った」「以前の管理人さんが15年前に、これを撮っていたことですごく助かった」なんてことが、いっぱいあります。長年勤務するほど、その有用性に気が付かされます。
だからとにかく、
「考えるな! まずは撮れ!」 (Don't think shoot!)
と言いたいです。
写真の撮り方ですが、あとで拡大することも考えて、ブレを防ぐため、「両手でカメラをしっかり持って安定させて撮る」ことが大事です。
また、「小さなものを撮る」ときは、そのものに接近して撮ると思いますが、「それがどこにあったものなのか?」があとからわかるように、「接近した写真」と同時に、少し下がって、広角で全体の様子がわかるような写真も撮りましょう。
「共用廊下の壁にヒビが入っていた」なんていう写真では、最寄りの部屋の部屋番号の表札を撮っておくと、場所がわかりやすいです。
なお、「高画素で撮れ」といいましたが、必ずしも「最高画質」で撮る必要はありません。芸術写真を撮っているわけではありませんから、「Super Fine」「Fine」などは不要で、「Normal」とかで大丈夫です。そうするとデータ量は小さくできるはずです。
ご参考に。
(そういうわけなんで、管理人さんには必ず、「必須備品」としてデジカメを支給して下さい。そうしていない管理組合は、ダメ組合です)