管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 管理人業務 住民の立場で見てみると? 



  
 近所の知り合いの管理人さんがクビになりました。以前から「もう年なんでそろそろやめるよ」と言ってたんで、特に驚くことではないものの、理由が「住民から苦情が来たため・・・」らしいので、ちょっと気になります。同業者同士から見ると、すごく真面目で仕事熱心な人だったからです。

 この仕事、1人きりですから、上司から「ここをこうしたほうがいいよ」、部下から「あれはよくないですね」などと、身内からチェックされることはありません。
 となると、自分自身が「真面目にきちんと仕事をしている」と思っていても、ひとりよがりかもしれません。住民側の視点に立ってみることが必要です。そう思って、視点を変えてみると。


「汚い管理人室だなあ」
 管理人室は外から丸見えです。特に外が暗いときは、部屋の中が良く見えます。私はいろいろな資料を自分で作成するため、どうしても書類関係がたくさんあります。書棚がないため、デスクに積み上げていますが、外から見るとこれがけっこうだらしなく見えます。また、「忘れないように」と画鋲で留めている書類も壁にたくさんあります。会社側から「貼れ」と強制されている、歯の浮くような標語ポスターも数多くあります。う〜ん、視点を変えて見ると、かなり乱雑で汚いです。他の管理人さんと比べてもひどいです。でも、自宅の机も汚くて、こういう性格なもんで、きれいにできません。

「いつも、ぼ〜っとしてる」
 清掃やら他の用事がない時は、管理人室の中でじっと座っています。いわゆる受付&監視業務というものです。事務仕事があるときは、それをやってますが、あまり下を向いていると監視にならないし、といって、ずっと外のほうを見ているだけだと、ぼ〜っとしてるように見えるし。実際、ぼ〜っとしてるし、何もない時は何もしていないのですが、「あの管理人は何もしていない」と思われるのも心外だなあ。

「さぼってる」
 清掃パートさんが働いている時は、二人で”お茶休憩”を取ります。といっても、管理人室を閉めるわけにもいかないので、窓はそのままです。湯呑片手に二人で四方山話などしながら、時にはバカ笑いなどしています。これも、「見る人が見たら?」と考えてしまいます。

「なんでやらないの?」
 例えば、
「植栽に虫がわいてきているのに、消毒しない」-これは植木屋さんの仕事なので管理人は何もできません。
「廊下に染み付いた汚れをなんで落とさないの?」-このマンションには廊下に蛇口もコンセントもなく、水を使った機械清掃ができないため、廊下は「掃き掃除だけ」という清掃業務仕様になっているのです。 
「蛍光灯の傘が汚い」-これも業務外です。といって、放置することもできないので年に数回は拭いています。
 住民の一人一人は、業務仕様書の中身をくわしく知っているはずはありません。ですから、こういった"誤解”はけっこうあると推察できます。こういうのを全部、「あの管理人は仕事をしない」と思われると、危ないです。

「たまたま」
 どうしても病院に行かなければならないので、終業10分前に管理人室を閉めて飛び出す。たまたま、こんな時に、うるさがたのご婦人にバッタリ。「あれ、ちょっと早いんじゃないの」「え、まあ・・・」という経験があります。ほんとに、たまたまで滅多にないことでも、こういう人にとっては・・・。 それから、郵便局に仕事で行った帰り、ちょっとコンビニでお菓子を買って帰る時、道で住民の1人と会ってしまった。

「サンダルばき?」
 この管理人室は住めるようにもなっているため、入るときは靴を脱ぎます。中ではスリッパです。出るときは外履きに替えます。というわけで、管理人室周辺のちょっとした小さな業務の場合は、スピード優先でサンダルを履いて外に出ます。すぐに戻ってくるつもりだからです。ただし、たまに、その仕事が終わって部屋に戻るときに、住民に捕まって、「ねえ、すぐこっち来て、見てよ」なんてのがあります。その用事を終えて、「さあ、戻れる」と思ったときに、また違う住民に捕まって、「あのさ、管理棟の屋根の上に洗濯物が落ちてさあ」と言われて、はしごで上ることもあります。この間、ずっとサンダル履きです。「まあ、この管理人たら、はしごに登るのにサンダルなの?」と思われているかもしれません。

 などなど、いろいろ考えると、「誤解をもたれる可能性はいくらでもあるなあ」と感じました。もし、その誤解を持った住民が、うるさ型のオバタリアンだったら、私もクビになるかもしれない。う〜ん、気を引き締めねば。


2003/5