管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

心労 ストレス






 先週の日曜日、親戚の結婚式に出席しました。今の結婚式は、会場側のお仕着せでなく、なんでも自分たちでコーデイネートするということで、心のこもった感じの手作り結婚式でした。それはそれでいいのですが、やはり、それだけのことをやると新郎新婦の負担も大きく、「おじさん、けっこう大変だったよ・・・」と新郎からこぼされました。新郎の心労も相当なものだったようです。

 以前、管理人講習会に参加した人が、めでたく、近くのマンションで実際に管理人に就職して、時々会ったりしていたのですが、残念なことに、先日辞めたそうです。原因は「ストレス」だったようです。

 講習会を覗いていて思ったのですが、講師の先生方は、清掃の仕方とか、設備機器の話とかは説明するけど、一番神経を使うことである「対人間の扱い方」を何にも説明していないのです。
 現場で、最も神経を使うこととは、「マナー違反住民への対処」です。これはもちろん、そのマンションの住民のレベルによって大きな差があり、一概には言えませんが、「住民全員がマナーをしっかり守る素晴らしいマンション」というのは聞いたことがありませんから、大なり小なり管理人は苦労しているはずです。マナーが良くても、「リストラされて生活が苦しく、管理費を滞納している」人もいます。そういう人にも督促状を出さなければならず、時には、「念書」を提出させなければいけないこともあります。つらい役割です。管理会社のフロントマンはたまに来るだけですが、私らはしょっちゅう顔を合わせるわけですから、これはしんどいです。

 「上の階の音がひどいのよ。注意してくれない?」「あそこの猫、時々外に出て、うちのベランダに入ってくるの。やめさせてよ」「あの人、いくら催促しても駐輪費払ってくれない」・・・・・・、当サイトを見れば、いかに多くのマナー違反住民がいて、さまざまなトラブルが日常茶飯事に起きていることがわかります。
 「そんなの管理人の仕事じゃないから関係ない。委託契約書にも入っていない!」とつっぱねることのできる人ならいいのですが、「そうはいっても、被害を受ける住民が頼れるのは管理人だけだからなあ。理事会役員さんはそういったトラブルには関わりたくない人ばかりだし・・・」と思ってしまう、心優しい人ほど、ストレスがたまります

 また、管理人の中には、前職ではけっこういい会社に勤めていて、「年金バッチリ悠々自適」という人がいます。そういう人が「家でゴロゴロしてるのもなんだから」と暇つぶしに管理人をやったりします。こういった人は、プライドも高いですし、「こんな面倒なこと頼まれてばっかりじゃ、やってらんねえ」とすぐに辞めるケースも多いです。
 職安でも会社の面接でも、仕事内容として言われるのは「午前中は清掃をして、週に1回電灯の点検をして、来客の応対をして・・・・」みたいな、表面的なことだけです。(説明する側も管理人の実態を知らないですから、この程度のことしか言えません) しかし、実態は、その他のことのほうがたくさんあり、ストレスがたまることがたくさんあるのです。委託契約の項目以外のことをやらされるのも、たくさんあります。

 警察官だったら、その権威をかさに、「そこに駐車してはいけない。逮捕する」とか堂々といえますが、管理人はしょせん最下層の職業でばかにされていますから、「そこに止めないでくれませんか?」と丁寧な言葉で注意し、「うるせいな、俺の勝手だよ。ここは私有地内だから警察も呼べねえだろう! バカ野郎、ひっこんっでろい!」と罵倒されます。小学生の子供すらバカにします。(親が管理人にする態度を見てますから、それをまねるのです) 
 前職でそれなりの地位にあった人なら耐えられないでしょう。なにしろこっちが悪くなくても、「バカ野郎」と罵られるのですから。この職業に就きたい人(いるかな?)に対する忠告は、「
プライドを捨てろ」です。

 もともと高齢者が多く、体力もありません。そんな人が神経まですり減らしたら、ほんと体が持ちません。人格の出来上がった仙人のような人もいるかもしれませんが、ごくわずかです。「高齢者は人格が出来ているから」というのは誤解で、ひねくれた性格の人のほうが多いです。(私を筆頭に)

 私なんか、清掃の人に愚痴をこぼして、少しは発散できますが、完全一人勤務のマンションだと、誰に相談できるわけでもなく、一人でストレスを溜め込んでいきます。

 佐世保の殺人小学生よりも前に、「管理人の心のケア」をお願いします。小泉首相殿。

 一生懸命働いて、いろいろな問題を解決しても、給料が上がるわけでもありません。むしろ下がるばっかり。これじゃあ・・・





森林浴でもして心を穏やかに

2004/7