管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 「苦情中毒」という病気




2014/3

 
 当HP内の「管理棟」のほうで、こんな記事を書きました。「管理人は公衆便所か?」って話です。今の人たちって、「会話が下手」というか、「対等な立場での、生身の人間相手の会話ができない」というか、そんな人が増えてきて、我々管理人相手に不満をぶつけたり、大手企業の「お客様センター」に電話をかけて、その会社の製品の品質の話にかこつけて、日頃の不満をぶつけたりするケースが多いそうです。

 先日、ツタヤの会員カードの解約をしようと、カード会社に電話をかけました。このツタヤは、昔「年会費は永遠に無料ですから、こっちの、クレジットカード機能付の会員カードを作りませんか?」って勧誘して、カードを作らせたのですが、この前、通知がきて、一方的に「新年度から年会費を徴収することになりました」って言ってきたので、「約束が違うだろ? 永遠に無料だ、って言ってただろう! このウソつき! おまえは自民党の政治家か!」と頭に来て、早速、解約しようと思ったのです。

 そうやって、カード会社に電話をしたのですが、相手は全部「自動音声」で対応します。生身の人間と話をして、「ウソをつきやがって。客をバカにするな!」と怒りたかったのですが、それができません。結局、最後まで、生身の人間は応対してくれず、ややこしい、「シャープを押してください」「+番を押してください」ってのしか言ってくれず、会話もへったくれもなく、そのまま、解約手続きは終わってしまいました。

 今は、どこの企業でも、この手の対応が多く、この前の「悪意風土」もとい、「アクリフーズ」の毒入り冷凍食品事件の時も、問い合わせ先に電話しても、なかなか生身の人間が応対してくれませんでした。
 映画館のコールセンターも、こっちは上映時間を知りたいだけなのに、自動音声で対応するから、映画の上映時間を聞くだけで、4分間も電話をしないといけないとか、すごいバカらしいことになっています。
 電気製品の取扱い方法に関して質問しようと思っても、自動音声対応ばっかりで、なかなか、自分の知りたいことを教えてもらえないとか、不便になる一方です。こういう不満はみんな同じようで、時々、マンション住民から、「キヤノンのサービスセンターの電話が全然ややこしくてわからないんだけど、助けてくれない?」とか救援を求められることもあります。キヤノンはほんとにひどくて、「ご質問になりたい製品名をおっしゃってください」とかコンピューターの声が聞いてくるんですが、「デジカメ」とはっきり、こっちがしゃべっても、「聞き取れません」とか冷徹に答えてきて、ラチがあかなかったり、ほんと役に立たないんです。なんか、「電話じゃなくて、ウェブで勝手に調べろ」というのが本音なのか、わざとやってるんじゃないか、と勘ぐりたくなるほど、「聞き取れません」って答えます。

 さて、こういう「自動音声対応」というのは、当然、人件費節約のためですが、もうひとつの理由が、上記に書いた「苦情中毒の人たちからの電話を撃退するため」という面があるそうです。仕事もしていない暇な人が、一日中、どこかの企業のコールセンター(市役所ってのもある)に電話をかけて、好き勝手なことをいいまくって、ストレス解消しているのだそうです。
 企業側は、こんな人間相手に高価な人件費をかけて対応するわけにはいかないので、自動音声を積極的に導入し、かつ、人間が応対する場合でも、必ず、「品質向上のために、この会話は録音させていただきます」という「警告」を加えて、暗に、「直接関係のないことでうちに電話をかけてこないで下さい」と言っているわけです。

 まあ、昔は「無言電話」とかかけてストレス発散していた奴もいましたが、今は技術的に、「相手の発信先がわかる」とか「非通知の電話は接続しない」とかできるようになり、無言電話もやりにくくなり、こういう企業とか役所とか、「じゃけんにはされない」ところに電話をしてうっぷんを晴らすんでしょうが、こういうのの相手をしないといけない人間の精神的苦痛を考えて欲しいなあ。管理人やってると、ほんと、つくづくそう思います。

 しかしまあ、ほんと、現代は「淋しい人」が増えてるんでしょうねえ。こういう「電話」をし続けていないと生きていけないのでしょう。

 近所に「コーヒーはうまくない」「店主は年配の女性 & ブス」「店は汚い」っていう喫茶店があるのですが、そこが、なぜかけっこう繁盛していて。その理由が、「店主が聞き上手」ってことなんです。一人でその店に言って、いろいろと話をするのが「癒し」になるのかもしれません。聞き上手って、一種の特殊技能かもしれない。オイラも磨きたいけど、そうなって、愚痴りたい人がいっぱい押し寄せても困るなあ。