管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

社宅使用 これも困る
&インターネットについて少々





 賃貸にしている部屋というのは、管理する側からすると非常に手間のかかる”悩みの種”です。以前、「寮なのか?」で書いた部屋も相変わらず、面倒をかける部屋です。ただ、先日、「いつも御迷惑かけてすいません」とオーナーがやってきたので、それ以降は少しはましになりました。

 同じようなパターンで、「社宅利用」という部屋があります。

 「区分所有者(=管理組合員=オーナー=大家さん)が仲介不動産業者を通じて、ある企業に部屋を貸し、その企業が自分のところの社員を住まわせる」という形態です。これが、複雑で困ります。
 まず、ここ数年、不動産業者が挨拶に来ることがほとんどなくなりました。電話連絡すらありません。リストラ・合理化で、業者の体質は悪くなる一方、面倒なあいさつ回りは省略の傾向なのかもしれません。

 そんなわけで、突然、入居者が何の予告もなしに引っ越してきます。私の勤務時間中なら、引越の途中に、その入居者を捕まえて、「ちゃんと手続きしてください」とお願いできるのですが、社宅利用の場合、会社の仕事の都合もあるでしょうし、引越代の多寡を気にしないのいいので、やはり日曜日の引越が多いです。(平日のほうが引越代が安い設定になっているため、普通の人の場合、平日に引越するケースも少なくない。社宅の場合は、会社負担で引越するため、そういうことは考慮しない)

 「ねえ、管理人さん。うちの隣に、昨日の日曜日、誰かが引っ越してきたんだけど。何の挨拶もないし、気味が悪いわ。いったい、誰が引っ越してきたの?」などと、翌月曜日に、隣室の人から言われて、初めて気がついたりすることがあります。
 社宅利用の場合、自分がお金を出して借りるわけでもなく、自分が契約するわけでもないため、「自分の部屋」という感覚がほとんどありません。近所への挨拶もまったくしない人も多いです。(もちろん管理人にも挨拶なし) それに、管理組合の活動に協力しようという感覚もほとんどありません。住む期間も短いですから、「この街に馴染もう」という意識もゼロです。といっても、社宅制度のある企業というのは、わりと大きな会社で、そんなにひどい会社ではありませんから、人間として、ひどい人はそんなにいません。(怪しい水商売系の寮として使用する場合は別)

 しかし、調べようとしても、何の連絡もなかったので、事情はさっぱりわかりません。社宅利用の場合、一人暮らしが多く、昼間は会社に行っている為、会うことができません。どこの不動産業者が扱っているかの情報もありません。大家(=区分所有者)に電話しても留守。そして、そういう大家に限って、たいてい、留守電にもなっていないのでメッセージも残せない。しょうがないので、手紙を書いて送る。前近代的なことをいまだにやっています。通信費、事務の手間もばかになりません。

 脇道:
 こういう時代なんですから、堀江君じゃないですけど、マンション内の住民管理もインターネット使ったらどうなんでしょうかねえ? うちみたいに高齢者の多いマンションでは無理かもしれませんが、PC環境の揃った住民が多いマンションでは、組合や管理会社からのお知らせにメール使ったり、HPを使ったりしたほうが、簡便だし、迅速ですよ。連絡手段はいまや電話よりメールだと思うんですけどね。”回覧板”なんていう戦前の制度をいまだにやってるのはおかしいですよ。総会の際の資料だって、紙じゃなくて、「電磁的資料」(pdfファイルとか)というのが、法律でも認められるようになりました。世帯数の多い大型マンションとか団地では、総会資料を電磁的に替えると、事務経費・手間は劇的に減少し、コスト削減&環境保護になると思いますよ。私も時々手伝いますけど、ページ数の多い総会資料を200部以上コピーするのって、すごい大変ですもん。50%の人を”電磁的管理”にするだけでも、ずいぶん違うと思います。
(当然、PCを使いこなせる管理人には資格手当を支給すべきです)

 
さて、手紙を出したら安心かというと、そうでもないんです。たいてい、こういう大家はいい加減なんで、手紙を読んでもシカトすることが多く、何の返答もありません。多少まともな人だと、不動産に連絡して、不動産屋から当方にコンタクトを取る様にさせます。でも、そんなこと待っている間に、土曜日の昼間(私は出勤だけど、普通のサラリーマンは休みだから、会うことが可能な場合がある)なんかに、その部屋に行って、直接、誰が住んでいるのか確認したほうが結局は早いわけです。

 サラリーマンは土曜は朝寝坊したいでしょうから、9時ごろはやめて11時ごろに訪問します。ここで話がやっとできます。でも、社宅利用の場合、「会社に言われたから、ここに来ただけで、"第三者使用届”だなんだといわれても、わかんない。会社のほうに言ってよ」とかあしらわれてしまいます。ここで初めて、「うわ〜、社宅利用か。面倒くさいなあ、困った」となるわけです。しかし、会社の社宅管理担当者(総務部のことが多い)が、わざわざここに来ることは絶対にないので、「じゃあ、とにかく、この書類を会社の担当者に渡して下さい」といって、「第三者使用の届」の用紙を渡します。
 この用紙は、これから、会社の担当者に渡り、そして仲介の不動産屋に渡り、そしてオーナーに渡り、オーナーが署名捺印し、それが不動産に戻り、会社の担当者に戻り、使用者の欄に、賃貸契約の当事者である会社の名前が記入され、居住者に戻り、それが管理人に戻ってきます。この間に、ずいぶん日数がかかります。
 社宅の場合、ややこしいのは、賃貸契約の名義は会社名だということです。これだと、書類上には、実際に住んでいる社員の名前が最後まで記載されません。社宅や寮として利用する場合専用の届出用紙を作らないといけないのかもしれません。このあたりは、組合として、「こうする」という決まりがないので、どうしたらいいか悩んでいます。
 
 排水管清掃の時など、「絶対にその日は在室して下さい。清掃ができずにその後詰まった場合、他の部屋に迷惑をかけることもありえます」といって、脅して、在室をお願いするのですが、本人が「私は、どうしても仕事で出かけなければならない。その件については会社の総務と直接話して欲しい」と投げ出されることもあります。となると、私がその会社に電話して、「なんとかして下さい。なお、鍵を預かることはやってません」と話します。「どうしても預かって対処して欲しい。部屋の中のものが盗まれても文句は言わないから」と、無理矢理押し付けられることもありますし、また、「じゃ、その時間だけ、うちの会社の女の子をよこしますので、彼女に部屋の鍵を開けてもらってください」なんていう場合もあります。

 とにかく、普通に区分所有者が住んでいる部屋なら、その人に話をすれば簡単に済むことでも、社宅の場合、中間に入る人が多すぎて、複雑かつ面倒で、困ってます。それに、賃貸契約はそのまま継続している間に、実際に住む人が入れ替わることもよくあります。この場合、管理員の実務上は、その異動を把握していないと困りますが、組合の事務処理上は、何の手続き書類もありませんので、連絡無しに出て行く人、連絡無しに突然来る人がいます。結局、誰が今住んでいるのかわかりません。

 とにかく、社宅利用は敬遠したいです。社宅を担当する総務の人も、一般常識を持って、ちゃんと、管理組合に連絡してほしいなあ。



2006/2



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