管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

女児誘拐?? 老人の親切心があだに





2014/9




 
 2014年9月25日。今、日本で問題になっているのは、「神戸 女児殺人事件」。元自衛官の精神異常者による犯行でした。バラバラ殺人という、恐ろしい凶行。それにしても自衛隊関係者の、こういった犯罪が多すぎます。自衛隊は、すぐに廃止しないと、日本国民は守れません。本当に日本に必要なのは「サンダーバード」です。

 さて、こんな事件があると、全国の「小さな子供を持つ親」というのは、当然、神経質になります。

 
「神経質になる」と、それから波及する、いろいろなことが起きる

ということまで、管理人は予想しておかないといけません。某Mマンション管理士さんは、「俺が顧問をしていれば、管理人の仕事の時間なんか、1日に20分あれば十分」というお考えのようですが、現実はそんなに甘いモノではありません。

 さて、こんなことがありました。

 神戸女児殺人事件が報道されまくっている日の午後。当マンション住民の小学生女児が、学校から帰宅してきました。でも、家族はあいにくの留守。女の子は、部屋のカギを忘れてしまい、持っていないので、中に入ることができません。

 こういうのって、よくあることで、他のマンションなんかでは、「管理人の配慮で、管理室の中に入れてあげて、親が帰ってくるまで、時間をつぶさせてあげる」なんてことをしているようですが、今は、個人情報保護法の関係で、各種個人情報がたくさん保管されている「管理室」に、管理組合役員以外を入れることを禁止しているところもあって、簡単にはそういうことができない時代になっています。
 うちの場合は、「集会室」がけっこう広いので、そこに案内し、夏ならば、エアコンのスイッチを入れて、「ここで時間をつぶしてね」と言って、中に入れてあげたりします。
(昔なら、「外で遊んでいれば?」と言ったのですが、今は、物騒な社会なので、子供1人で外に出すのも、はばかれて、なるべく、中に入れるような姿勢になっています)
 集会室の中にも、個人情報に関わる書類はありますが、鍵のかかる書庫の中なので、問題無いです。

 集会室にはテレビとかはないのですが、(以前から、「非常時用に買えば?」と薦めていますが組合は無視) 今の子供はたいてい、DSとかを持ち歩いているので、それで遊んで時間をつぶします。
 この時に大事なのが、その子供の部屋の玄関ドアに「貼り紙」をすることです。親が帰宅した際のことを考えて、「**ちゃんは、集会室にいますよ 管理人」と書いておきます。

 管理人が対応すれば、上記のようにするのですが、今回は、これを、ある老人住民がやってくれたのです。

 西棟に住む高齢者女性住民Aさんは、その時(午後2時くらい)、東棟3階に住む友人の部屋を訪れた後、自分の部屋に戻るところでした。その時に、東棟の同じ階の並びの部屋の前の廊下で、カギを忘れてしまい、自分の部屋にはいることができない女児を発見。この子とAさんは、ふだんはなんの接点もないのですが、事情を聞いて、「外はすごい雨で、外の公園で遊んでいなさい、とも言えないし。だったら、我が家で数時間預かってあげよう」という崇高な親切心で、この子を、西棟4階の自分の部屋に連れて行ったそうです。

 この時に、Aさんが、管理人のところに寄って、「うちで預かるからね」とか言ってくれれば良かったのですが、まったくの独断で行動し、他人にも教えずに、その子を自室に入れてしまいました。(※子供は携帯は持っていない)
 Aさんとしては、その子は「ひ孫」みたいなもので、可愛くてしょうがなかったようです。自室でいろいろもてなしたそうです。子供の方も、おばあちゃんに可愛がられるのが楽しかったそうで。ついつい、長居をしてしまいました。

 午後4時くらい、その子の母親が帰宅しました。本当なら、戻っているはずの、自分の子供がいないことにあわてます。そして、その子が、部屋のカギを持たずに、登校したことにも気が付きます。「部屋のカギがないから、入れなかったのかあ」と思いました。それで管理室に来て「うちの子、知りませんか?」と言ってきました。
 私も、神戸の事件のことがあるので、そのあと、親と手分けして、マンション内外をあちこち探しました。なかなか見つからないので、親は、(やっぱり、神戸の事件のことがあるから、異常に心配したのだと思います)、警察に通報しました。

 警察も、ふだんなら、「どっか、友達のところにでも行ってるんじゃないの? そんなことくらいで、電話かけるなよ」という、任務を完全に放棄した、やる気のない対応をするのですが、今回は、やっぱり、神戸の事件のことがあるためか、素早く反応して、警官がやってきました。でも、とにかく、探しても見つからないので、「では、防犯カメラの映像を探してみましょう」ということになり、(これも本来は担当役員が操作する規定になっているのに、管理人に丸投げしているのが現実) 私が機械を操作して、カメラ映像で女児の足取りを追いました。

「午後2時。玄関ホールカメラに、女児が入ってくる映像あり」
「エレベーターに乗って、自分の部屋の階で降りる映像あり」(部屋の前にはカメラはないので、その後の映像はなし)
そこで、足取りが途絶えました。その後、どのカメラ映像を探しても、彼女は発見できません。
警官「階段部分にはカメラはないのか?」
「ないんですよ。予算の都合もあるので、うちは、そんなにカメラの台数が多くなくて。主に、外部からの不審者侵入に備えたカメラ配置なので。でも、外部との出入口は網羅しているから、写った映像がないってことは、彼女は、このマンションから外には出てないってことですよ」

ということで、今度は、この子交友関係ということで、同じ小学校に行っている子供がいる部屋をリストアップして、それを捜索。でも、居ません。「まさか、車のトランクに詰め込まれて、外部に出たとか?」など、いろんな想像がかけめぐります。だんだんと、ことが大げさになってきました。防犯カメラ映像を再度詳細にチェックします。(この時点で、管理人は、残業に突入。残業代は出ないのに) 

警察は、妙案もなく、右往左往するだけ。親も心配で心配で精神状態がおかしくなってきました。他の野次馬住民は、「バラバラ殺人じゃないの?」なんて余計なことを言うバカがいて、親はいっそう興奮。

そこで、管理人が「こうなったら、拡声器使って、マンション内住民全員に、状況を伝えて、情報を集めましょう」と提案。(館内放送とかはないので、昔ながらのメガホンを使って、大声で伝える方法。近所迷惑なので、ふだんはこういうことはやらない。私の経験でも、拡声器を使ったのは、大震災の時と、防災訓練の時だけ)
警察 「うん、そうしてくれ」
それで、集会室の中の、メガホンを取り出して来たのですが、これがなんと「電池切れ」。これも本当は、「毎月の理事会の時に、担当役員がメガホンと懐中電灯の作動確認をする」ってことになってるのに、役員がしていないのです。

 これが単三電池なら、私の個人的ストックがあるのですが、単2電池なのです。参ったなあ。ってことを言ってると、野次馬住民の中で、「単2? うちに電池のストックあるよ」との声。野次馬も役に立つことがあるんですねえ。

 そうやって、ご近所迷惑ですが、繰り返し、「**ちゃんの行方を知っている人はいませんか?」と、雨の中、マンション敷地内をあちこちと回りながら、拡声器で叫びました。


 そうしたら、Aさんと、女児がいっしょに、出てきたわけです。これで無事解決ってことです。(あたりは、もう真っ暗。パトカーの赤い光が目立っています)

 ここで、問題なのは、Aさんと女児が、Aさんの部屋にいくまでの足取り。高齢者のAさんなら当然エレベーターを使うはずなのに、エレベーター内のカメラには該当映像がないのです。
 「いや、あの時間帯に、エレベーターに乗ると、Bさんが犬をいっしょにエレベーターに載ってることがよくあって。Bさんって、犬をちゃんと抱っこしないで、エレベーターに乗るでしょ? あたし、犬が苦手だから、鉢合わせしたくないのよ。4階くらいなら、健康のためにも、階段使ったほうがいいから、エレベーターは使わなかったのよ」とのこと。一同、吉本新喜劇みたいに、床に崩れ落ちました。(ここでも、不良飼い主のおかげでみんなが迷惑を被ってることがわかる)

警察「まあ、とにかく、見つかってよかった、よかった。アハハ。では、これで失礼します」と帰って行きました。

女児の親は、安心して、急に泣きだしてしまいました。女児本人は、意味もわからず、キョトンとしています。高齢者Aさんも、自分としては親切でやったことが逆効果になったことを理解できず、「なんで、こんなに大げさに騒いでるのよ。私は、いいことをしたのに・・・」と私に文句を言って来ます。



あ〜あ・・・・・ こんなことばっかりだなあ。このマンション。トホホ。まあでも、とにかく、無事でよかった。










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