管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
中古マンションのリノベーションのブーム 弊害も多いです |
まずは、このページをお読み下さい。
中古マンション売買における 「転売専門の業者」 という存在
このページでは、私は、「大掛かりなリフォーム工事」と表記しましたが、今は、これを「リノベーション」と呼ぶそうです。
通常の中古マンションの売買というのは、「部屋の所有者」から、「購入者」への直接取引です。(もちろん、仲介の不動産業者がからむので、取引手数料がかかる)
しかし、今、うちのような古いマンションでは、「転売専門業者がいったん購入し、その業者がリノベーション工事を行ない、きれいにしてから、買主に売り渡す」という二度手間が増えています。
@「経済面」
間に一回業者が入れば、その業者の手間賃&儲け(100万円〜500万円)が加算されます。仲介不動産業者も、2回になりますから、手数料も2倍です。そのコストはすべて、最終的には買主が負担することになります。ですから、「リノベーションマンション」は、ものすごく高く、「もうちょっとがんばれば、新築が買えるじゃないか?」という価格になります。でも、この深刻な不況下、「新築を買うお金はない。でも、たとえ、築年数が古くても、新築みたいな室内がきれいなマンションが、新築の8割くらいの価格で買えるなら買ってしまおう」という人がけっこういるのです。(私個人は、「バカじゃないの?」って思いますけど)
さて、そんなわけで、かなり高い価格で、リノベーションマンションを買うと、やっぱり、「無理したんじゃないの?」ってことがわかります。
というのは、これは、うちのマンション内の実例ですが、ここ数年のリノベーションブームに比例して、リノベーションの部屋を買った人の「管理費滞納」がすごいのです。皆さん、購入後、1年くらい経過すると、管理費等を滞納しはじめます。おそらく、「ローンが厳しい」のだと思います。まあ、転売業者がガッチリ儲けるわけですから、部屋の売価はかなり高いわけでして。経済的に大変なんでしょうね。
A「設備面」
普通のリフォームというのは、「壁紙を変える」とか「床をフローリングにする」とか「ユニットバスを変える」といったものですが、リノベーションとなると、もっとすごい改造を行ないます。そして、その改造が、たいてい、詳細を伝えることなく勝手に行われるため、その弊害があります。また、ここ数年の「職人の技術力低下」による、質の悪い工事も一因です。
※311の大震災後、建設関係の職人は、福島に人手を取られてしまっています。また、東京オリンピック招致決定のため、全国で様々な建築需要が生まれ、ますます、職人が足りません。人は足らないし、腕は落ちているし、そんな状態でまともな工事ができるわけがありません。当マンションでのリノベーション工事でも、「職人が足らなくて、工期が2週間伸びた」なんてことも実際に起きています。
「壁をぶちぬく」・・・テレビアンテナの配線を切断したケースがありました。また、テレビアンテナの壁の中の配線を勝手に変えてしまい、階下の部屋の電波の強さが弱まってしまったこともあります。
「床下のコンクリを無理矢理削る」・・・ものすごい振動と騒音で、みなさんが驚きます。構造部に手を加える事は禁止なのに、なんでやるんでしょうか? 強度の劣化の影響も出ると思われます。
「配管の位置を変えてしまうことで、その後のメンテに影響が出る」・・・大掛かりな水回りのリノベーションを行うと、上水道の配管や排水管の配管も変えてしまうことがあります。こうなると、マンションの設計図面とは異なる配管になってしまいます。地震で揺れたり、工事の際の「継ぎ目の処理が甘かった」などで、リノベーションした部屋が、その後、数年で漏水事故を起こすこともけっこうあります。その時に、漏水の補修工事に来た業者が、「これ、図面と違うじゃないか?」「どこを探せばいいんだ?」と困るのです。(工事業者から、購入した人に、「床下の配管図」とか、そういう図面を渡して、保管しておいて欲しいです)
また、古いマンションの場合、管理組合で、マンション全体の「水道管の更新工事」(パイプ自体を完全に新しいものに変えてしまう工事)を行うこともあります。その際にも、その部屋が、もともとの建築図面と違う配管になっていると、更新工事の業者がすごく困るようです。
それに、住民からしても、古いマンションなら、床下を工事されても、「まあ、しょうがない」と思うでしょうが、新築同様にきれいになった新品の床を、購入した2年後に、「配管工事のため、床をはがします」とか言われても困ると思います。こういう時って、床を工事する業者は、基本的には、配管工事が終わったら、元に戻すのですが、そういう時に、「あんなかっこいいデザイナーズなんとかという床とか壁は元通りにはできないよ」というケースもあります。
「電話では話せない・把握できない」・・・従来の部屋だと、住民から電話が来て、「脱衣所のところの天袋の扉があかないのよ」なんて言われると、「あ、あれね。よく壊れるんですよ」なんてふうに、こっちも、現場を見なくてもいろいろと話ができるのですが、これが、リノベーションした部屋だと、間取りも変わっているし、今のリノベーションは水回りも大胆に変えたりするから、もう、ちんぷんかんぶん。実際に、その部屋に行って、実物を見ないと理解できません。
「いきなり不具合」・・・冒頭にも書きましたが、ここ数年、工事業者の質が悪いです。それに、「建築」なみにすごい工事をするのに、この「リノベーション」というのは法的規制がまったくなく、ちゃんとした「竣工検査」も行われません。(※読者による情報提供: 埼玉県では、希望すると、簡易ではあるものの、検査をしてくれるリフォーム工事専用の制度があるそうです。http://www.pref.saitama.lg.jp/site/reformkouji/)
また、トータルに現場を見る人間がおらず、「壁は壁の業者」「水は水の業者」といった、各種様々な業者が、横のつながりもなく、単独でやってきて工事をするため、「壁の業者が、電気配線を破壊した」なんてこともあります。そして、壁の業者は、電気のことなんか専門外で全然わからないので、壊したことすら気が付かないので、そのまま、壁を仕上げてしまいます。逆に、工事の段取りが悪くて(人で不足で職人の手配がうまくいかないことが多いから)、きれいに壁を仕上げたあとに、電気工事が入って、その職人が壁を傷つけた、なんてこともありました。
手抜きもかなり行われているようでして。実際にあった例では、「管理人さん、お風呂に入って、浴室の換気扇を回しても、湯気がなかなか消えないのよ」という苦情が来ました。ほんとは、これも管理人の仕事ではないのですが、いちおう、現場にいって、点検口から、換気扇の様子を見ると、なんと、「換気扇と換気口をつなぐパイプが存在していなかった」なんてことがありました。湯気は、屋外に出ていなかったのです。
水道関係は、とにかく、不具合が多くて、入居してすぐに漏水事故、というのも珍しくありません。
まあ、いずれにしろ、リノベーションって、表面的なものだけはすごく見栄えがいいのですが、目にみえないところでどんな不具合があるのかはわかりません。
というわけで、管理組合側としては、「リノベーション」する際は、詳細な「工事図面」とか「工事内容」の書類を、提出してもらい、ちゃんと専門家に審査してもらってから、「工事承認」を行ない、かつ、その書類は組合として永久保管する、といったシステムを構築しておかないといけないと、私は思います。うちの場合、それ怠ったので、今、とても後悔しています。
それに、転売専門業者というのは、不動産業者とは限らず、免許もなしにできるので、信用のおけない会社も多いです。「3年たったら、その会社は消えていた」なんてのもあります。不具合を補償して欲しい時に、その売主である会社がなくなっていたら困ります。(正直、その実態は、893がからんでるんじゃないかなあ? 社員の口調を聞いていても、そんな感じがします)
私個人としては、「リノベーション物件はやめたほうがいいよ」とアドバイスしますけどね。怖いよお。
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