管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

夏といえば〜   水の事故 









 今日は終戦記念日 8/15です。休日の少ないマンション管理人といえども、8/13-15くらいは夏休みでお休みするのが普通の管理会社ですが、当社はそんなこと関係ないです。スタッフは全員日本人ですが、出稼ぎ外国人のごとく、こきつかいます。社長は、「夏休み? そんなの関係ねえ!」と、どこかのお笑い芸人(沖縄出身)」のようにほざいています。

 そんなわけで、ファミレスのランチも「お盆期間中なのでランチはお休みです」という日でも我々は出勤しております。

 ただ、管理する立場から言って、お盆期間中に出勤するのはそんなに悪いことではありません。というのは、お盆のように長期休暇期間というのは、なにかしらのトラブルトラブルが発生しやすいからです。

 そう、昨日早速、発生しました。内容は、水の事故。テレビでは連日のように水の事故を報道してますが、マンションの場合は海水浴ではなくて、漏水事故のことです。

 13日の深夜(=14日の未明)、10階のAさんは寝ていました。しかし、天井からポツポツと滴り落ちてくる水滴によって起こされました。電気をつけておきてみると、天井のシーリングライトのプラスティック容器部分が金魚鉢のように水浸しです。「いったい、何?」とびっくりしたそうです。少し冷静に考えて、「上の階の部屋からの漏水に違いない」と判断し、部屋の外に出て上の階に行きました。そうしたら、上の階のBさん(男性。独身)の部屋のドアの下の隙間から水がじゃんじゃん流れ出してきていたのです。

 Aさんは、Bさんの部屋のインターホンを鳴らし、そして、ドアを叩きましたが、いくら呼んでも返事はなし。(あとでわかったことだが、Bさんはお盆休みで帰省中)
 Aさんがドアをドンドン叩く音で隣室のCさんが、「うるせいな。今、何時だと思ってるんだ」と起きてきました。また、その他の部屋の住民も(このマンションは高齢者が多く、「エアコンは苦手なのよ」という人が、エアコンは使用せずに、部屋のドアを開けっ放しにして、風を入れて寝ているので、音がよく聞こえる)、次々と起きてきました。Aさんの、「うちの部屋で天井から水漏れ・・・」という説明と、Bさんの部屋の前の廊下が水浸しになっている状況を見て、みんなパニックになってしまいました。

 実は、「全自動洗濯機」を私が書いたさい、「うちでもこういうことが起きるだろうなあ、備えておいたほうがいいなあ」と思って、理事長にお願いして、「他のマンションではこういう事故がありました。皆さんも注意してください」と全戸に書類を配布したことがあります。ご丁寧に、「永久保存版です。洗濯機の横側面に貼っておいてください」とも書いておきました。しかし、やはり、このマンションの住民ですね。誰一人、この書類のことを覚えていませんでした。

 深夜にもかかわらず大勢の人がBさんの部屋に集まってきました。理事長も起こされて召集されました。そして、みんなで、Bさんの部屋のドアの下からあふれ出てくる水をじっと見ています。「どうしようか? Bさんはいったいどこにいったんだ?」  大勢の人が集まってきたんだから、この中で誰か一人ぐらいは、「メーターボックスを開けて、中の水道の元栓を締めれば水は止まる」ということに気がつきそうなんですが、誰も気がつかない。さすが、わがマンション。民度の低さは安倍内閣の支持率並みです。

 「いったい、なんでこんなに勢いよく水が漏れてるんだ?」「誰か、Bさんの携帯番号知らないのか?」「日ごろから誰とも付き合わない人だからねえ」・・・・などと、他人はのんびりしてます。(みんな、深夜で寝ぼけているのか、「警備会社に電話しよう」という話も、まだこの時点では出なかったそうです。トホホ) 廊下にあふれる水に関しては、排水口に流れるだけですから、みなさん痛くもかゆくもないです。しかし、大変なのは階下の部屋のAさんです。Aさんはとりあえず、自分の部屋に戻り、雨漏り対策を始めました。そうしたら、大事なことには気がつかないのに、こういうことにだけ反応する人がいて、「うちのバケツを貸してあげるわよ」「バスタオルを貸してあげる」・・・・と雨漏り対策に関しては、みなさん協力してくれたそうです。

 寝ぼけ眼をこすっているうちに、理事長がようやく、「そうだ、まずは警備会社に電話しよう。たしか、管理人室のドアの表面に緊急連絡先一覧表があったはずだ」と気がつきました。(本当はその前に、水道の元栓に気がついてください。理事長殿) そうやって、警備会社に電話をして待つこと20分。この間、水は流れっぱなし。警備会社から、のそっとした柔道家みたいな警備員が来ました。(今、テレビCMやってますが、サッカーでボール蹴飛ばしてから警備会社が来てゴールを守るんなんて、そんな時間の余裕あるわけないじゃん?)
 警備員は住民たちが何もしていないことに驚いて、「なんで元栓を閉めないんですか?」と聞き、そこではじめて住民たちは「あ、そうか、水道の元栓を閉めればいいんだ」と気がついたそうです。遅すぎ。
どんだけ?

 「わかりました。じゃあ、私が止めますから、メーターボックスの鍵を貸してください」と警備員が言うと。「メーターボックスの鍵って何のこと? 私はじめて聞いた」という人や「うちは持ってるけど、うちのじゃ開かないでしょ」(全室、同一です。共用できます)と言う人など、「この人たち、マンションに住む資格ないでしょ。何の知識もない」と、警備員があきれるような人ばかりだったそうです。とにかく、誰かから鍵を借りて、メーターボックスを開き、水道の元栓を締めました。しばらくして、ドアの下からあふれてくる水が止まり、野次馬住民からは「うわー、すごい」と歓声があがったそうです。 (情けない)

 さて、その後は、「いったい、どこから水が漏れてたんだ。部屋の中に入って調べよう」ということになり、「管理会社ならマスターキーを持っているはずだ」と、これまた真実を知らない誤解住民が、今度はうちの会社の緊急センターに電話をしたそうです。緊急センターの宿直職員もこれまたオバカさんで、「すいません、よくわかりません。担当フロントを呼び出して対応させますから」と答え、担当フロントは電話で起こされたそうです。マンション管理会社の緊急センター職員であれば、分譲マンションの場合は、「管理会社がマスタキーを持つということなどありえない」とわかっているはずなんですが、知らなかったようです。

 ホテルとか、寮とかならわかりますが、各部屋ごとに区分所有権がある「分譲マンション」では、マスターキーなどというものは普通はありません。刑事ドラマなどでも、「管理人に言って、あけてもらおう」というセリフが頻発しますが、これは架空の話です。原作者は現実を知りません。リゾートマンションなどでは、管理上の都合で鍵を預かっている場合もあるそうですが、普通の分譲マンションでは、マスターキーはないです。そんなことしたら、恐ろしいことになります。管理会社なんか信用できないんだから。 (町内会長が町内にある家の全部の鍵を持っているようなものです。そう考えれば、どんなに恐ろしいことかわかります)

 担当フロントは、有給休暇でお盆休みをとり、北海道の実家に戻って、「白い恋人」を食べていたそうですが、夜中に起こされて、トンチンカンな質問を受け、「ほんと、因果な商売だなあ、そのわりに給料安いし」と嘆いていました。

 結局、水が止まったことによって、いったん、「とりあえず、今日のところはこれでおしまいにして」と散会になったそうです。

 翌朝、私が出勤してから理事長がやってきて、「Bさんと連絡をとりたいんだけど、管理人さん知らない?」という話から、前夜の騒動を知りました。「いまどき、帰省するからといって管理人に連絡先を教える人なんかいませんよ」、そういうわけで連絡はとれず、Bさんの部屋は出水は止まったとしても水浸しのままです。そして、階下のAさんの部屋は一時期のようなボタボタ落ちる水は止まりましたが、依然として、わずかにハリーポタポタ落ちる水に悩まされ、水浸しになった部屋の後始末に追われています。

 14日午後になって、顔見知りの宅配便業者(女性)が荷物を配達に来た際に、「大変なことがあったんだよ」と私が愚痴を言って話を始めると、「あ、Bさんの携帯なら私知ってるわよ」「え? なんで?」「いや、あの、Bさんとはパチンコ友達で、いろいろ情報を教えてもらってるの」「え。ホント、? じゃ今すぐに連絡をとってよ」とお願いしました。ひょんなところ、これでようやくBさん本人と連絡が取れました。そして、Bさんは急遽戻ることになり、15日の今、このマンションに帰ってきて、私が状況を説明しているところです。そして、いっしょに部屋に入ってみたら、予想どおり、全自動洗濯機の水道の蛇口の栓が外れていました。「以前、配布した書類見なかったですか? 全自動洗濯機の蛇口は閉めてくださって」「え? いや、覚えてない」 

 幸いなことに、Bさんの部屋は居間や和室には浸水しておらず玄関周辺が濡れているだけで、さほどダメージはありませんでした。さて、問題は階下のAさんの部屋。保険がききそうですが、これからが大変です。


 マンション管理の仕事は「経験を生かす」ことが大事なんですが、肝心の住民が言うことを聞いてくれないと無意味です。

 そういえば、「白い恋人」も、過去の経験を全然生かさずに、社内隠ぺい工作をしてました。これでまた、「北海道はダメダ」と世間に思われます。(補足:11年前から賞味期限の改ざんをしていたそうです。この会社腐ってます。会社自体が賞味期限切れ)



 


2007/8