管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
脚立の安全な使用法は、何が正解か?? |
マンション管理人という仕事では、「脚立」を使用することがたくさんあります。特に、共用部の蛍光灯の交換作業では、必須の道具になります。でもって、これがけっこう危険でして、10階の廊下(マンションの外廊下というのは、水はけのために、実は、外側に向かって傾いており、水平ではない)なんかでやると、「恐ろしい」と思うような仕事です。
そういうわけで、脚立の安全な使用方法には日頃から関心があります。
そんななか、2015/1/20 こういうニュース記事を発見しました。誤報で有名な「朝日新聞」という会社のニュースです。
>>> 庭木の手入れや掃除の際に、脚立やはしごから落ちる事故が相次いでいると消費者庁が発表した。軽いけがではすまなかった事例が6割以上を占め、死亡例もある。「年末は大掃除などで使う人も多い。気をつけてほしい」と話している。
という内容です。
この記事の中に、以下の様なイラストが掲載されています。
「天板に乗らない」というのは、基本中の基本なんですが、「またがらない」というのは、初耳です。私はいつもまたがって使っています。そして、「○」とされている、片側に両足を揃えて乗る方法」は、私にとっては「怖くて、こんなことできないよ」という方法なんです。
朝日新聞のことですから、誤報の可能性は高く、信頼はできないため、それでもって、おおもとのソースである消費者庁のHPを覗いてみました。
すると、「正しい使い方」として、この図が紹介されていました。
これもびっくりです。出典は「軽金属協会」さんという業界団体のようですが、この使い方は、私は恐怖です。
なので、消費者庁に電話をして聞いてみました。すると、発表した資料通りの言葉が返ってきて。そこで、詳細な話をしたら、担当者の役人様は、「1段目の横棒に両足を揃えて乗り、天板の部分に、足の「すね」を押し当てると安定する」とおっしゃいました。
私は「はあ? あなた、実際に脚立に乗ったことあるんですか?」と聞いてしまいました。だって、実際に使ってみればすぐにわかることですから。これは非常に危険な乗り方ですし、足の「すね」を硬い金属に押し当てたら、痛くてしょうがないです。「弁慶の泣き所」って言うくらいの部位なんですから。特に、この姿勢だと「テコの原理」が作用して、強く当たります。
やっぱり、役人って、「厄人」ですねえ。
以前も、国土交通省のHPで「節水対策」として、「トイレのタンクに、水を入れた2リットルのペットボトルを投入すると、その分節約できて、良いことです」と紹介されていたことがありました。でも、これ、トイレメーカーのtotoも「それはやめて下さい。機械が壊れることがあります」と「警告」していた「間違った使用法」でした。実際に、うちのマンションの住民でも、これを実践した人がいて、タンク内の水放出用のバルブが壊れ、節水効果以上の高い修理代を払って直しました。この手配も私がしました。本来の委託業務範囲外なのに。その後、私が書いた記事を読んだ、愛読者さんが国土交通省に、このインチキ節水方法の削除を申し入れ、国はすぐに非を認めて、即日削除されてました。(こちらを参照下さい)
さて、となると、消費者庁は、この「軽金属協会」さんの言うことを鵜呑みにして、今回の「注意喚起」をしたものと思われます。そこで、業界を調べてみました。
この業界を代表する会社は、「長谷川工業」さんという会社のようで、詳細&丁寧なHPを構築されておられます。
http://www.hasegawa-kogyo.co.jp/product/howto/index.html
ここに「安全な使い方」が紹介されているのですが、この中に、こんな写真があります。
これが「正しい姿勢」ということで記載されてるんですが、私、管理室にある大きな脚立で、これと同じ姿勢をとってみましたが、とてもじゃないけど、恐ろしくて、真似できませんでした。若くて度胸のある人ならこれもできるのかもしれませんが、我々、中高年にはこれは無理です。それに、天板部分に当たる、「足のすね」が痛くて痛くて。不安定だし、痛いし、こんな姿勢が「正しい方法」だなんて、私には信じられません。ちなみに、清掃員さんに同じことをやってもらったら、「絶対にありえないです。こんなことをやらせるのなら、私、即日辞職します」って、怒ってました。当然だと思います。危険ですもん。
このあと、「実際の職人さんたちはどう考えているのだろう?」と思い、そっち方面を検索してみました。
すると、
http://www.doctor-sumai.com/bbp01.php?itemid=503
こういうページがありました。
この中で、
この写真のように、「またがる姿勢」が、「上から2段目にまたがって作業すると、安全性が高まります。」と書かれていました。私も、はなはだ同感です。いつも、こうやって作業をしていますから。現場の人間として、これが「一番安定」しています。
でも、このページをもっとよく見ると、コメント欄に「通産省の指導により、脚立は跨いではいけないようになりました。
脚立メーカーは取り説にも書くようになりました。」と書かれていました。
「マタイ伝ではいけない」、もとい、「跨いでいけない」と国が指導したのかあ。なるほど、これで「業界団体が、またいではいけない」と書いている理由がわかりました。
でも、どうなんでしょう。現場で長年作業しているベテランが、複数名で、「この方法が良い」と思っていることを、現場のことをろくに知らない、「国の役人」が、「跨いだ時に事故が起きたから」と、バカな指導をしたんでしょう。原発と同じです。(てなこと書くから、うちのサイトも圧力食らって閉鎖させられたりするんだなあ)
そんなわけで、その他にもいろいろ調べてみたり、実際の脚立の乗って試してみたんですが、国と業界団体が推奨する「またがずに、片側の棒に両足を揃えて乗る」というのは、そのやり方によって、大きく安定度が変わることがわかりました。
つまり。
この図のように、「上から2段目の棒に乗って、天板部分に、足の腿の付け根を押し付ける方法」は、かなり安定します。この方法であれば、「またぐな」という主張も理解できます。
しかし、この写真や図のように、
一段目の棒に乗り、「腿」の部分ではなく、「膝から下の部分を押し付ける」方法は、危険です。
つまり、私の意見は、「1段目は危険。2段目よりも下に足をかけるのであれば安全」ということです。1段目に乗るのであれば、絶対に「跨いで乗る」ほうが安全です。(注:脚立を使用する以上、「完全に安全」とは言えず、あくまでも「こっちのほうがいい」という「比較」の意味ですが) これは物理学的にも生物学的にも正しいと思います。
原発政策も経済政策もそうだけど、ほんと、日本という国は、アホな役人によって滅ぼされそうな気がします。