管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

マンション管理業務で発生するゴミは事業系ゴミ? 家庭ゴミ?




2019/3





 

今回の話題はかなり複雑です。
私はパワポを使って上手に「表」とか作れない爺さんなので、読みにくいと思いますが、どうかご勘弁下さい。

さて。
<前説 1>
当マンションは完全にスラム化しております。
地方の大型マンションのため、共用部分の敷地はけっこうあり、「土」の部分も大きいです。その「土」を勝手に無断で私物化し、「家庭菜園」にしているツワモノもいます。(それも一人じゃありません。複数です)

そのうちの一人なんですが、高齢化のため、自分ひとりで畑仕事ができなくなったようで、ある日、どこかに住んでいる息子がやってきて、家庭菜園内の「植物」や、家庭菜園のテリトリーをはっきりさせるための針金とかロープとか、如雨露やシャベルなどの道具類をまとめて処分していました。
管理人としては、普天間基地じゃないですが、「不法占拠」している共有部分の土地を、元に戻してくれるわけですから、大歓迎です。
でも、困ったことに、そうやって排出されたゴミを、ろくに分別もせずに、マンションのゴミ集積場に、それも回収曜日を関係なく出そうとしたので、「待った」をかけました。それも、ちょっと意地悪をしまして、「ちゃんと分別して下さい」ではなく、以下のように言いました。

「そのゴミは、共用部分から出たゴミなので、家庭ごみではありません。市が回収してくれるのは、家庭ゴミだけです。それは事業系ゴミになりますので、ご自分で処理をして下さい。うちのマンションのゴミ集積場には出せません。もともと、共用部分の土地を勝手に私物化して個人の家庭菜園にしたものです。管理会社はそんなものまで面倒を見る契約にはなっていませんから」

本当は、このことは正しくはないのですが、今までさんざん迷惑をかけてきた償いを少しでもさせようと、あえて、こういうことを言って困らせました。

その息子さんは自家用車で来てました(これも駐車禁止の共用部に無断駐車していた)から、「え? あ? そうなんですか? じゃあ、持ち帰ります」と言って、ゴミ置き場には出しませんでした。




<前説 2>
話は変わって、私の友人のことです。
彼は埼玉に大きな一戸建ての自宅があるのですが、勤務先は東京都心であり、長時間の通勤が大変なので、都心にある「雑居ビル」的なマンションの一室を借りて、セカンドハウスとしております。
ここは、いちおう「住居用」の設計で作られているので、トイレはもちろん、お風呂も台所もあるのですが、場所柄、実際のところは、「お店」「事業所」として使われているのがほとんどであり、彼のように「住居」として使っているのはごく少数だそうです。
その「事実上の事業用マンション」では、ゴミの出し方が変わっています。「家庭ゴミ」として出せないんだそうです。つまり、東京都清掃局の「家庭ゴミ回収車」がやってこないマンションなのです。


では、どうするのか? というと・・・・
「事業系ゴミ」と書かれた専用のゴミ袋(1枚500円とか、けっこう高額)を購入して、それにゴミを入れて出すそうです。そう、「家庭ゴミ」ではなく「事業系ゴミ」になってしまうのです。

普通は無料で出せる家庭ゴミ(多額の税金が投入されている)ではなく、事業系ゴミになってしまうため、お金がかかりますが、家庭ゴミのように細かな分別をする必要がありません。また、収集曜日も回数が多いので出しやすいです。まあ、分別の手間を考えたら、妥当な金額かもしれません。(※事業系で出されるゴミは、分類がいい加減できちんとリサイクルされていないものがあり、問題になっています)
そんなマンションもあるということをご記憶下さい。

<本題>
さて、ここから本題です。事業系ゴミに関しては、当サイトでも、過去に、「管理業務の事業系ゴミ」という記事を書いておりますが、それも合わせて読んでいただけるとありがたいです。
※自治体によって判断が異なる場合があります。当サイトの記事を鵜呑みにはせず、正確を期すために、ご自分の自治体でご確認下さい。

まず、ゴミ分類の全体像を把握しましょう。ゴミは専門用語では「廃棄物」といいます。



前説2で書いた「事業として使われているマンション」ではなく、一般的な居住用マンション(分譲か賃貸専用かは関係ない)の住民が自室内から出すゴミは「家庭系廃棄物」と呼ばれ、基本的には、そのマンションの「ゴミ集積場」に出して、それを各自治体(清掃局とか清掃事務所とか名称は自治体によってさまざま)が回収します。これは「税金」で賄われているものであり、基本は「無料」です。「有料の袋を買う」ところもありますが、それでも、その袋の値段は数十円であり、前説2のマンションのような高額(税金が投入されていないから)ではありません。

このように「住民の部屋の中から出たゴミ」が「家庭ゴミ」であることは理解しやすいのですが、共用部分から出たゴミは「家庭ゴミ」なのでしょうか? 植栽部分から出た「花びら」や「落ち葉」、廊下に落ちていたタバコの吸殻、台風一過のあとにマンション内各所に落ちているいろいろなゴミ・・・・・ マンションでは、住居内以外にも、共用部分から大量のゴミが出るものです。

分類の基本となるポイントは「住民が自主管理をしているマンション」か? 「管理会社に任せているマンション」か? という点です。「管理会社が報酬をもらって清掃する」のは「事業」であり、「住民の自主管理」は「事業ではない」という判断基準が大切になります。

住民が自主管理をしていて、清掃員とかを雇っていない場合は、事業ではないため、住民が共用部分の落ち葉を掃除しても、玄関ホールに落ちていたゴミを掃除しても、そのゴミは「家庭ゴミ」となり、マンションのゴミ集積場に出して、自治体のゴミ収集で持って行ってもらってOKです。(ただし、自主管理といっても、清掃役の住民に役職報酬を払っているケースがあります。これが報酬だとすると、事業になってしまいます。このように、細かい話をすると、線引は難しいです)

次は「管理会社に清掃を任せているケース」です。実際にはこれがほとんどだと思います。この場合、壇蜜、もとい、
厳密に言うと、「家庭ゴミ」では出せないのです。

なぜかと言うと、「管理会社がやっている清掃」は「事業」だからです。お金をもらって清掃業務をしているわけですから「事業」なんです。
このへんは、マンション管理士の村上さんが運営している「士魂商才」というブログの中の記事でも書かれているのですが、村上さんは末端の最前線の現場をよく知らない人なので、書き方が悪く、「産業廃棄物」と「事業系一般廃棄物」の区別がよくわかっていないようで、正確な記事になっていないのが惜しいです。

結論を言うと、管理会社の「管理員」や「清掃員」が掃除をして出たゴミは、考え方としては「事業系一般廃棄物」となります。

しかし、そのゴミの中には、「事業系一般廃棄物」とは別の分類になる「産業廃棄物」もあり、これは産業廃棄物として処分しないといけません。

※「産業廃棄物とは?・・・詳細はこのページを御覧ください。ややこしいです。
ややこしいのですが、わかり易い例を挙げるとすると、管理人が、切れた電球や蛍光灯を交換する場合がありますが、この「電球」「蛍光灯」は、産業廃棄物の分類の中の「9番 ガラス」に該当し、他の「吸い殻」とか「葉っぱ」の掃除とは別で、「蛍光灯」を処理するには、「産業廃棄物」として専門業者に頼んで処理しないといけません。管理会社によっては、「電球や蛍光灯を交換した場合は、会社で回収し、会社でまとめて産業廃棄物業者に処理してもらう」ということをしているところもあります。
注:「住民の自主管理」のマンションでは、電球や蛍光灯も家庭ゴミとして出せます。


これが、法に基づいた正式なゴミの出し方になります。

ただし、「理想と現実は違う」「国道では速度30キロ制限の原付バイクが60キロで走っている」という、「法律との乖離」というのは、ここにもあるものでして・・・・

実際のところ、葉っぱとかタバコの吸殻とか・・・・ 管理会社が行なう普通の清掃業務で出るゴミは、「家庭ゴミ」として出しています。正式には「違法」かもしれませんが、それが現実です。
「マンションのことならわかるんだ〜」と連日テレビCMを流している長谷工さんの管理するマンションでも、そうやって、清掃員が出したゴミを、家庭ゴミとして出している実例も承知しています。「わかるんだ」だったら、事業系廃棄物にしないとだめなのにね。うちの会社のフロント君は、無知でそういうことを知らないから、何の疑問もなしにやってるけど。

ただし、「これは普通のゴミじゃないだろ? 家庭ゴミに混ぜたらまずいよなあ」というゴミを清掃することもあります。よそから持ち込まれた「不法投棄」のゴミなんかがそうです。この前も、どこかのお店がつぶれたのか? 店内の商品陳列棚が捨てられていたことがあり、これはさすがに明らかに家庭ゴミではないので、処理に困りました。うちのマンションの場合、こういうのは、マンションの裏の目立たないところに集めておいて、「フェンスの交換工事をする」なんて時に、その工事業者に割増金を払って、事業系廃棄物として、工事の際に発生する廃棄物といっしょに処理をお願いしたりしています。

というわけなんで、某マンションの理事長のブログに「不法投棄された家具を管理人さんが、”家庭ゴミで出せるように”と、3日かけて、のこぎりで細かく切断して処分してくれた。ありがたい」なんてことを書いてありましたが、管理人が関わった段階で、これは「事業系一般廃棄物」になりますから、切断しても、家庭ゴミでは出せません。本来は、管理組合理事長が「こういう不法投棄があって困っている」と自治体に申し出て、自治体で処分してもらうべきものなんです。うちは、不法投棄がある度に毎回理事長に報告していますが、何の反応もないので困ってます。「管理会社がなんとかするもんだ」って思いこんでるんですよね。なんとかさせるんだったら、それ相応の管理委託費を払えよ! って思います。

<参考>



マンションでは「植栽剪定」「植栽管理」というのがあります。うちのマンションでも、専門の業者を頼んで剪定してもらっています。これ、専門技術の必要な仕事ですから、当然、人件費も高いのですが、理事会の役員の中には、「決算書」の「植栽剪定」の項目を見て、「チョキチョキ切るだけなのに、こんなに高額なの?」と驚く人がいます。
でも、植栽剪定って、実は、「切る」仕事の時間よりも、「片付け」のほうが時間も労力もかかります。切って落ちたのを集めるだけも一苦労です。そして、集めた枝や葉っぱは「事業系一般廃棄物」として適切に処理しないといけません。植栽業者は高額なお金をかけて処分しています。(お金をかけたくない連中が、不法投棄というのをするわけです)
そういうわけで、言葉で「植栽剪定」と聞くと、「チョキチョキ切るだけ」と思うかもしれませんが、その後の清掃や廃棄物処理にかかるコストも大きく、それに管理会社の手間賃が加わると、けっこうな金額になるのは無理もないのです。

小さなマンションなんかだと、植木好きで、立派なハサミを持っている住民とかがいて、「俺がやってあげるよ」とやってくれる例もあります。この場合、発生したゴミは、家庭ゴミとして出せますから、廃棄物処理の費用がかからず、安くできます。ただし、「お疲れ様でした。これ、些少ですが、お礼です」と組合からお金を出してしまうと、「報酬」となり、事業になってしまうため家庭ゴミでは出せず、「事業系一般廃棄物」として処理しないといけなくなり、すごいお金がかかります。ご注意下さい。
植栽ついでにお話すると、植栽管理では時々「土を補充する」なんてことがありますが、土も無料ではなく、買うとけっこう高いです。このように、植栽というのは金食い虫なんです。


同じように、古いマンションだと、「隣地境界線にあるフェンスが老朽化したので、新しいものに変える工事を行なう」なんてことがありますが、これも、取り壊した古いフェンスの処理費用がけっこうします。
事業系ゴミのことを知らず、「ゴミは無料で持っていってくれるもの」と思っている人が管理組合の理事になると、お金のことであれこれ揉めることが多々あります。