管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「管理組合理事長」の印鑑は何種類あればいい?



2019/9


印鑑に関しては、ここでも過去に書いています。ご参考に。 

この前、ツイッター上で「管理費会計と修繕積立金会計は厳密にしっかりと分けないとだめだ」という議論がありました。


 あるマンションの新理事長が、「”管理費の口座の銀行の印鑑”と”修繕積立金の口座の印鑑”は別のものにすべきだ」と言い出しました。今までは同一のものだったのです。それで、もう一個別の印鑑を作って、修繕積立金の銀行口座の登録印鑑を変更し、銀行関係で2種類の「管理組合理事長印」を使用することになったのですが・・・・・

 この2種類の印鑑が非常に似ていて、管理会社も間違えやすく、困ったそうです。というのも、まるっきり同じ大きさの丸印で、かつ、字体も同じ。違うのは、元の印鑑は「管理組合理事長印」と書かれていたのに対して、新しい印鑑は「管理組合理事長之印」と彫られているというだけの違いなんです。発注したのは、その新理事長なんですが、なんで、そんなややこしいものにしたのかは不明です。

 それでも、その理事長の在任時は、「自分が発注したもの」ということで、間違いは少なかったのですが、次の後任の理事長などは、間違いを連発。書類の差し戻し、印鑑の押し直しで、無駄な労力が浪費されました。ある年などは、印鑑が入っている袋(袋の表面には、間違い防止用に、「これは管理費会計用」「これは修繕金口座用」と明記してある)を、取り違えてしまい、旧理事長から新理事長に印鑑を引き継ぐ際に、「逆」の状態で渡してしまったそうで、新理事長が就任した際に、銀行あてに押印する「理事長名変更届」とかの陰影が「すべて逆」になり、全部やり直しになったそうです。就任時は大量の書類を処理しますから、それを全部やり直しするのは大変です。

このように、「管理費会計と修繕金会計の印鑑を別のものにすること」は、けして悪いことではありませんが、ややこしくて、ミスを誘引する可能性は大です。


さて、いっぽうで、「理事長印は一種類しかない」というマンションもあります。これは、銀行口座の印鑑も、日常の事務処理で、「リフォーム工事申請書の理事長確認」で押す印鑑も同じということになります。これは、事務処理としては、1個しかないので間違いにくく便利で楽かもしれませんが、「何億というお金が入っている銀行口座」に使用する印鑑を、通常業務の認印としても使っているとしたら、非常に怖いです。この印影を手に入れた悪意の第三者が、陰影を偽造して、犯罪を犯すことが可能になるからです。

そういうわけで、私がおすすめするのは、「銀行口座関係だけの印鑑」をまず一個作ります。これは、管理費口座も修繕金口座も同じ印鑑でいいと思います。そして、もう一個は、「認印」的な日常使いの印鑑を作ります。これは、「管理組合への申請書類の受付認印」とか「警察へ出す車庫証明書類の理事長印」「消防設備点検報告書の理事長印」などとして使用します。こっちは、外部に漏れる可能性が高いものなので、銀行印とは別にするのです。というわけで、2種類あると、安全でいいと思います。

実際、うちのマンションでは、「銀行関係は丸型の印鑑一個」「認印的に使用するものは、角型のもの一個」という使い分けをしています。これは、見た目もはっきり違うので間違えにくく、わかりやすいと思います。

ただ、そう思っても、「丸と角の区別もつかない」という、アホな理事長がいるわけで。(理事長は、その選出方法からしても、アホがなる可能性が高いから) うちの場合、これでも間違えることが多々あります。「丸のほうの理事長印をお願いします」と指示しても、自分の名前のシャチハタを押す人がいるくらいのレベルなんで。。。。 トホホ。

ですから、今は、なにか理事長に押印をお願いする場合は、その印影のコピーを添付して、「この印影のハンコを押して下さい」と懇切丁寧に指示をしないとだめです。ああ、めんどくさい。

なんたって、「ここに理事長の名前を書いて下さい」とお願いしたら、「その理事長の名前 (鈴木とか)」ではなく「理事長の名前」という文字を書いた人もいるくらいなので。。。。。。  管理人はつらいよ。



ところで、古いマンションの中には、「最初から管理会社が2種類の印鑑を作っておく」ところがあるようです。その理由は、昔は、「通帳と印鑑の分別保有」が徹底されておらず、管理会社が、通帳も印鑑も両方持っていて、電話で理事長に「あのお金、払っておきます」とか報告するだけで、管理会社が勝手に口座からお金を引き出して処理したりしていたからです。つまり、「管理会社所有の理事長印(主に銀行口座関係)」と「マンション内で使用する日常使いの認印的な理事長印」の2種類です。そして、理事長が実際に手元に置いておくのは、後者の一個だけです。そういう意味での「2種類」ということです。

まあ、とにかく、そのマンションの実情に合わせて、印鑑のことも、一回ちゃんと考えておくことが大事ではないか、と思うわけです。そのマンション毎の最適な方法を見つけ出して下さい。

※最近は、銀行関係の処理に、「電子的処理」とかが導入され、「理事長印は不要」となっている管理組合も多いそうです。


※管理組合を法人化しているところも増えていますが、管理組合法人の場合、どうなっているかは、実情を知らないので何も書けません。