管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

老朽化したエレベーターの更新工事
その1 





2015/9

★エレベーター更新の話は超長編大作になっています。そのため、下記の表のように記事が分割されています。また、関連項目もブログのほうで記述していますので、ご参考にして下さい。    
 更新工事@ 更新工事をすることになった。決まったけど工事日程変更。停止中のことを誰も考えてくれない。  更新工事A 停止中の3週間のことを考えるのは管理人? アンケート&調査実施  
 更新工事B 工事期間中はなるべく出入りしないようにする。その事前対策。  更新工事C 工事直前の準備。実際に工事をする業者との打ち合わせ。契約体制の説明。  
 更新工事D いよいよ工事開始〜終了 更新工事のいろいろ  鏡 窓 換気扇 
 こぼれ話@ ご近所のマンションでのエレベーター更新工事  こぼれ話A 階段の踊り場に椅子とS字フック
 こぼれ話B トランクルームに防災用品  こぼれ話C 一階の部屋の住民なのに・・・
 こぼれ話D 介護用品の搬入  こぼれ話E ボタンのキャンセル方法が変わった
 こぼれ話F 隙間に鍵を落とす  こぼれ話G 速度は変化なし
 こぼれ話H エレベーターの機械音  こぼれ話I ほんとエレベーター会社は何もしなかった
 こぼれ話J 工事するのはたったの一人?  



 エレベーターの話です。長くなるので数回に分けて書く予定です。

※当マンションのエレベーター管理の体制は、「独立系ではない大手エレベーター会社と契約」「エレベーター管理は、管理会社の委託契約の中に組み込まれている(組合とエレベーター会社の契約ではない)」となっています。


 当マンションは、
築35年を超えています。一般的に、「エレベーターの寿命」というのは、「25年くらい」と言われていますので、本来ならとっくの昔に、「更新工事」(「リニューアル」ともいいます)をしないといけないのですが、下記の理由から、検討されては何度も先送りされてきました。



 実は、愛読者の皆さんはご承知ですが、当マンションは、世帯数200を超える「大きなマンション」ではありますが、エレベーターが2機しかありません。そして、当マンションの建物の構造は「東棟」と「西棟」の2つに別れており、管理室や玄関ホールがある1階部分は、東西にまたがっているため、登記上は「ひとつの建物」になっているものの、2階から上は、東棟と西棟は完全に別物になっており、お互いに行き来することもできません。

 つまり、「東棟専用に1機、西棟専用に1機。計2機」ということで、「実際のところは、エレベーターが1台しかないマンション」と考えてもらっていいのです。

 ということは、
「1台のエレベーターが動かなくなると、住民はエレベーターを一切使うことができなくなる」というわけでして、そうなると不便極まりないことになります。

 普通、中規模以上のマンションでは、エレベーターが複数機あるため、「1号機の更新工事をしますので、皆さんは2号機をお使い下さい。2号機が大変込み合いますが、なにとぞご了承下さい」といった感じで、「まったくエレベーターが使えなくなる」ということは回避されます。
 そういうところでは更新作業も簡単にできるのですが、「1台しかない」ということになると、「え〜? 3週間もエレベーターが一切使えないの? そんなの嫌だよ。私らが役員の時には、更新工事はやらせないわよ」とか苦情が出るわけでして、そうやって、ずっと、先送り、先送りされてきたわけです。
 
 RJCさんのマンションなどは大型マンションばかりなので、こういう話題は関係ないと思いますが、日本には小さなマンションも多数ありますから、そういったところの管理組合さんにとっては、これからする話は参考になると思います。皆さんの役に立つよう、執筆していきます。


 検討されては先送りされてきた「エレベーター更新工事」ですが、ひとつのきっかけが、「東日本大震災」。「うちのエレベーターって、地震の時はどうなるの? まあ、今回みたいに停電になったら、停止するのは当たり前だけど」と、ある役員が言い出し、調べてみたら、このエレベーターには「地震管制装置」はついていなかったのです。まあ、古いから仕方ないんですけど。

 「地震管制装置」があると、だいたい、「震度4」くらいの揺れを感知すると、エレベーターは自動的に停止するのですが、ここのエレベーターは停電しない限り、動き続けます。「動くんだったらいいじゃないか?」と思うかもしれませんが、「地震の揺れでなんらかの故障が発生しても動き続ける」ということですから、良いわけではないのです。なにか歪みが発生しても無理矢理動こうとして、階と階の途中でつっかかって止まってしまうかもしれません。そうなると中に乗っている人の脱出は困難です。
 また、震災後、点検では「異常なし」との診断ですが、「5階と6階の間で時々、ギキーって鳴るのよ」といった「異常」が住民から報告されるようになり、「やっぱり、大地震で、なにかおかしくなっちゃったんじゃないか?」という声が多く寄せられ、「いい加減にリニューアルしないといけないな」という空気にようやくなってきて、かつ、エレベーター会社(財閥系M社)も、震災後を「チャンス」と捉えて、リニューアルの営業を積極的に仕掛けてきたので、やっとこさ、昨年度の理事会で「エレベーターのリニューアルをしよう」ってことで予算化し、今年の総会で議決されたわけです。


 なお、「通常のエレベーターの維持管理」は、元請けは管理会社で、実際に行なうのは「エレベーター会社」という形なんですが、理事会のほうで、「管理会社経由にすると、手数料が上乗せになって高額になるから、組合とエレベーター会社との直契約にしたい」と言い出し、かつ、うちのフロント君のほうでも「エレベーターのリニューアル工事の大変さ」をよく知っていたため、「うちとしても、管理会社が元請けになるのはお断りします。手数料が入らなくてもけっこうです」と言ったため、
直契約となりました。


 そういうわけで、当初は、今年の9月に更新工事が行われる予定だったのですが、それがすんなりとは行かず・・・
 今年度の役員が、更新の計画のデザイン図を見て、「こんな色、嫌だなあ。もっと別のものにしてよ」「うちの親戚のマンションのエレベーターには大きな鏡がついていて、姿見になってちょうどいいのよ。鏡をつけてよ」とか言い出し、計画が狂ってしまいました。予算化措置をした「前年度の役員」は、エレベーター会社が提示したプラン(当組合は、今、あまり、お金がないので、わりとシンプルな安価なものを依頼していました)に対して、「これで良し」ってことだったのですが、いざ、工事を行なう、今年度の役員は、昨年度の役員と嗜好が違っていたようです。また、昨年度理事会の経緯を何も知りませんから、言いたい放題言います。結局、「仕様の一部変更」です。
 こういう「年度がまたがる計画」ってのは、こういうことがあるから困るんですよねえ。これも、「年度ごとに役員全員が入れ替わってしまう輪番制の理事会」の「弊害」と言えるでしょう。相手をするエレベーター会社の「リニューアル工事担当」の人も大変です。説明も一から全部やり直しだし。

 

 まあ、色の変更とか、鏡を取り付けることくらいはそんなにたいしたことはないので、「なんとか急いで、予定の日程で工事をします」ということになり、一安心だったのですが。
 
 リニューアル工事の説明会(※これも、本来は、直契約だから、管理会社が関わるものではないのだが、エレベーター会社も理事会もまったくやる気がなく、しかし、住民サイドからは説明会開催の要望が多く、実際は、管理会社が開催しないといけなくなってしまった。ただ働き)の席上で、エレベーター会社が用意した、カラーのかっこいい「完成予想図」なるものが公開されたわけですが・・・・ 

 まず、問題になったのが、操作盤の上部にある「非常時の押し釦の位置」です。これは我々含めて関係者全員の不勉強が原因だったのですが、小さな子どもを持つ親から指摘がありました。
「現在のエレベーターに非常ボタンの位置が高すぎて、小さな子どもが手が届かない。子供一人で乗って、万一閉じ込められた場合に、手が届かないと困る。新しいものは、このボタンの位置を低くして欲しい」との指摘です。
でもって、新しいエレベーターの設計書を見ると、非常ボタンの位置は、そのままで変わらないことがわかり。「それは困る。低いものに変えて欲しい」という意見が出ました。

加えて、
「今のエレベーターは、扉横の操作盤だけでなく、カゴ内の側面部にも操作盤がある。計2個になっているものが多い。当マンションは高齢化が進んでおり、車いすで利用する人の増加も予想される。その人達には、この側面操作盤は便利なはず。そして、手すりも取り付けて欲しい」という意見も出ました。

 これは、ほんと、「ごもっとも」という意見で、むしろ、「なんで今まで誰も気が付かなかったのか?」というものでした。(私が、ちゃんとからんでいれば、当然、そういうことも伝えたんですが、管理人の意見なんか誰も聞きませんからねえ)
 前年度の役員が、何の知識もないのに、自分たちだけで、計画を立て、ただ、「安くしよう」と考えて、他の住民の意見も聞かなかったから、こういうことが起きます。この案件に関する広報も、何もしませんでしたし。

 この「側面操作盤」のアイデアは、「側面操作盤は比較的低い位置に取り付けられるものなので、そこの非常ボタンは、小さな子どもでも手が届く位置にある」「側面操作盤を取り付けるのであれば、ドア横の操作盤の仕様を変える必要はない」「だったら、一石二鳥じゃないか」ってことで、賛成多数で、「付け足そう」ってことになりました。(説明会の場で、こういうのを決めていいのかどうか? 手続き論にこだわるマンション管理士だと、Goサインを出さないかもしれませんが、とにかく、うちのマンションでは、こう決まってしまいました)

 その他、この説明会では、「いちゃもん」のような意見も出て、ややこしい説明会になったのですが、その「いちゃもん」をつけた住民が、実は「1階の住民」でして。私が理事長に、「あの人、1階の住民だから、エレベーターには乗りませんよ。何にでも難癖つけるのが趣味なんです」と教えて、その人の意見は無視して閉会しました。

 こういった「改定意見」が出たため、仕様設計をやりなおしすることになり、結局、工事日程がずれてしまいました。また、予算的にも足らなくなり、「予備費」を充填したり、てんやわんやです。(かなり大きな工事金額変更だったので、この件も、マンション管理士がいたら、「予算を変更するには臨時総会の開催が必要です」とか言ったと思いますが、うちはそんな面倒なことはせずに、そのまま、Goでした。みんな、もとは自分たちが払ったのお金なのに、あんまり気にしないんだよねえ、管理組合のお金になってしまうと)

 さて、
日程変更にはほんと困りました。エレベーター工事というのは非常に重要なことですから、定期総会での議決以後、「何日から何日までエレベーターが使えません」という予告掲示をずっと出し続けていたのですが、それも、書き換えました。
 書き換えると、事情を知らない住民が、「なんで、予定が変わるんだ? おかしいだろ?」っていう苦情を言ってきますし、それに対して、今回の経過をいちいち説明します。説明も面倒で、こっちはえらい迷惑です。 中には、「エレベーターの工事があるというから、引っ越しの日程を後ろにずらしたのに、ずらした日程の日に工事をするって、どういうことだよ! 8階から、階段で荷物を運べって言うのか! いまさら、引っ越しの日程を変更するのは大変なことなんだぞ!」とか、高齢者住民の家族から、「エレベーター工事中は生活ができないから、短期入所の老人ホームを予約しておいたのに。それを変更しないといけないのか!」とか、ひどく怒られたこともあります。お気持ちはわかりますが、何の罪もない管理人をいじめないでくださいませ。

 そういうわけで、日程が2ケ月ほど、ずれました。

 さて、そういう「スケジュール変更への対処」も大変なんですが、時系列が遡って、話が元に戻りますが、最も重要なことは、
「エレベーターが使用できない3週間をどうするか?」ってことなんです。
 

 足腰が元気で、「階段なんて全然苦じゃない」って人ばかりならいいんですが、そうは行きません。体の弱い高齢者がいっぱい住んでいるんですから。エレベーターが老朽化するのと平行して、住民も老朽化するのです。ですから、エレベーターの更新工事をするマンションは、必然的に、「エレベーターがないとすごく困る」という住民も多く存在するのです。ですから、当然、去年やっていた、エレベーターのリニューアルを検討する理事会でも「どうする?」ってことが話し合われたと私は思っていたのですが、フロントに聞いても、昨年度理事長に聞いても、「そのことは何も話されてない。忘れてた」と、アホな回答が返ってきました。あんたら、本物のアホか?

 ということは・・・・  当然、エレベーター会社が、「工事中はどうしたらいいのか?」という「ノウハウ」を持っていて、それを教えてくれるだろう、と、てっきり思ったのですが。。。。。

 ところが、ぎっちょんちょん。私が直接電話をしたエレベーター会社M社の担当者が言うには、「うちは工事をするだけなので、停止中の対応策とかは、うちではしません。管理組合様のほうでやってください」という、冷たい返答。「そうは言っても、実際におたくはたくさんの更新工事をしているわけだから、過去の経験が豊富にあるはずでしょ? 他のマンションでは、こういう対応策をしていましたよ、とかのノウハウがあるはずでしょ?」と、私は食いついたのですが、「いえ、ありません。うちは工事をするだけなので・・・」との冷酷な返答。

 う〜ん。エレベーター会社って、原発作ってる会社と、かなり重複するんですが、「原発のいい加減さ」ってのが、ここでよく理解できました。爆発したあとのことなんか、何も考えてないのと同じで、エレベーターも、「使えないことによる不便さの解決方法」なんて、彼らには関係ないんです。普通の会社だったら、「解決するためのサービスを提供することで、そこでも儲ける」ってことを考えると思うのですが、エレベーター会社にはそういう思想はないようです。ほぼ、独占状態の安定した業界なので、そこまであくせくして儲ける必要もないのかもしれません。まさしく、原発と同じ構造です。

 そういうこともあって、リニューアルを検討する理事会にM社が出席した時に、M社の口からは一切、「停止期間中はどうするか?」ってことが出てこなかったのでしょう。

 さて、そうなると、管理組合側で「エレベーターが使えない期間の対策」を「一から」考えださないといけないのですが、そういう面倒な仕事を、ここの管理組合がやるわけがなく・・・・・・・  当然、「管理会社さんの方で考えてよ」ってことになりました。でも、今回のエレベーター工事って、上述のとおり「管理組合とエレベーター会社間の直接契約」になっており、本来、管理会社はなんら関わりのないものなのです。

 1円も払わないくせに、非常に手間のかかる、「対策」を押し付けるって、ひどい管理組合だと思いませんか? でもって、フロント君は「うちの会社の仕事じゃないんで」って言うし。。。。。
 あしたのジョーじゃない、案の定、「管理人さん、よろしく頼みますよ」って言ってくるし。結局、私の仕事になりました。
 この時に、「私一人で全部やるのは無理です。組合さんの意見を聞いたり、了承を得ないといけない案件もあるでしょうし。誰か、今年度の役員の中で、この件の担当者を決めて下さい。そうしたら、その役員と相談しながらいろいろ考えますから」と条件をつけたのですが・・・ 結局、担当役員というのは誰もやってくれず・・・・  ひどすぎる。まあ、「この工事を決めたのは昨年度の役員でしょ? あたしらは関係ないじゃん」っていう理屈もわからないでもないけど。。。 トホホ。

 といった経緯で、私が、「3週間、エレベーターを使えないことへの対応策」を一人で考え出さないといけないことになりました。

 さあ、大変だ。


(Part2 に続く)







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