管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

エレベーターの更新工事  その5 「工事開始」 


歩くしかないのです



★エレベーター更新の話は超長編大作になっています。そのため、下記の表のように記事が分割されています。また、関連項目もブログのほうで記述していますので、ご参考にして下さい。    
 更新工事① 更新工事をすることになった。決まったけど工事日程変更。停止中のことを誰も考えてくれない。  更新工事② 停止中の3週間のことを考えるのは管理人? アンケート&調査実施  
 更新工事③ 工事期間中はなるべく出入りしないようにする。その事前対策。  更新工事④ 工事直前の準備。実際に工事をする業者との打ち合わせ。契約体制の説明。  
 更新工事⑤ いよいよ工事開始~終了 更新工事のいろいろ  鏡 窓 換気扇 
 こぼれ話① ご近所のマンションでのエレベーター更新工事  こぼれ話② 階段の踊り場に椅子とS字フック
 こぼれ話③ トランクルームに防災用品  こぼれ話④ 一階の部屋の住民なのに・・・
 こぼれ話⑤ 介護用品の搬入  こぼれ話⑥ ボタンのキャンセル方法が変わった
 こぼれ話⑦ 隙間に鍵を落とす  こぼれ話⑧ 速度は変化なし
 こぼれ話⑨ エレベーターの機械音  こぼれ話⑩ ほんとエレベーター会社は何もしなかった
 こぼれ話⑪ 工事するのはたったの一人?  



いよいよ完結  2016/10



<直前の直前>
さて、いよいよ、エレベーターの更新工事の開始です。でも、その前に、更新工事開始の
前日のお話。私は、明日からの工事開始に備えて、最終準備作業をしていたのですが、その日は朝からマンション内が大忙しでした。

「各種配達がうじゃうじゃ」・・・重いミネルウォーターの配達とか、近所のスーパーのお米の配達とか、いろいろな「重い荷物の配達」がその日に集中しました。まあ、しょうがないです。「工事開始前の直前に重いものは運んでおいてもらって下さい」と勧めたのは私なんで、ある意味、「みんながアドバイスに従ってくれた」と喜ぶべきことです。
しかし、配達用の車はあちこちに止められるし、配達の人が多いんで、エレベーターも待たないといけないし、廊下で、台車同士がすれ違う際に、台車の角を、玄関ドアにぶつけて汚しちゃったり、いろいろとありました。


「病院とか福祉関係」
・・・「エレベーター停止前に診察を受けておこう」「クスリをもらっておこう」「福祉サービスを受けておこう」といった人たちが、それぞれの施設に向かいました。朝の8時半ごろには、マンション前にタクシーがずらっと並んで壮観でした。近所の人は「お葬式でもあったんですか?」と質問してきたくらいです。

「長期宿泊に出発」・・・福祉施設のロングステイに行ける人が出発しました。「この期間は東京の娘のところに泊めてもらう」という高齢者のところに娘さんが車で迎えに来ました。

「やっと気がつく」・・・当マンションの住民は「掲示板は一切見ない」「配布物があってもすぐに捨てて、絶対に見ない」という人が十数名いるのですが、そういう人たちも、直前のざわざわ感でようやく気がついたようで、「え? エレベーターが使えなくなるの?」と管理室に聞きにきます。「今頃かよ???」 呆れ果てている私ではありますが、懇切丁寧に説明をします。


開始!
<いよいよ初日>

さて、いよいよ工事の開始です。
「その4」でも書きましたが、工事の初日というのは、実際のところ、「資材置場の設営」とか「控室になる集会室の中の準備」とか「養生作業」など、いわゆる「準備作業の日」となるわけで、エレベーター本体が動かなくなるわけではありません。
なので、工事関係車両が多数やってきて、その対応は大変ですが、特に大きな混乱もなく、作業は進んでいきます。
でも、「え? 今日から工事開始だから、今日はエレベーターには乗れないかと思ってた。なんで、動いてるの?」という勘違い住民が数名現れ、それの対応に追われました。ちゃんと事前に懇切丁寧な説明書類を全戸投函してるんですけどね。
初日ということもあり、工事の請負元である「エレベーター会社」の営業担当の人間がやってきました。でも、すぐに帰っていきました。「エレベーター会社のほうで、現場監督みたいな人が毎日来て、ちゃんと見てるんだよね」と聞くと、「いえ、時々しか来ません」との返答。つまりは「丸投げ」ってことです。
ついでに、「工事の進捗状況とかの写真撮影とかしないの?」「工事終了後は、工事の状況の写真帳の提出とかないの?」と聞くと、「そういうのは契約に入っていません」との返答。おいおいおい、契約相手が素人だと思って、ずいぶん手を抜くんだなあ。呆れ果てました。さすが、原発を作っている企業グループの一員です。

それから、この日突然言われたことが有ります。

「各階のエレベーターのドアの横に置いてある消火器を一時移動して下さい」
はあ??? そんなこと初めて聞いたよ! まあ、たしかに、現場を見ると、「この消火器は場所を変えないとだめだな」ってことは理解しますが、こういうのも事前に言って欲しいものです。とても大事なことじゃないですか? 特に災害時は「あれ? エレベーターの前にあるはずの消火器がない!」ってパニックになること必至です。そんなのを当日になって言ってくるとは。まったく危機管理のなっていない会社です。さすが、原発を作る会社です。
(この要請を受けて「なるべく近い場所」「通行にじゃまにならない場所」を探して、置きましたが、もともと無かったものが置かれているわけで、「足をぶつけたじゃないか! なんであんなところに消火器があるんだよ!」って、私が怒られました。そういうことに気が付かなかった私が悪いかもしれませんが、本来は経験豊富なエレベーター会社が事前に教えることでしょ? 丸投げしていると、こういう配慮ができないんだよなあ。最悪。


stop
<2日目 本当にエレベーターが止まる>

掲示物などの広報は十二分にやりましたが、それでも、理解していない住民がいます。工事関係者は、各階のエレベーターホールに、バリケードのようなものを置いて「動きません」と表示します。これにつきあい、「え? 動かないの?」といまだにそんなことを言う住民の相手をします。こんな大事な日なのに、元請けのエレベーター会社の営業マンは顔を見せることもありません。

さて、2日目は、「朝からエレベーターが止まります」と事前アナウンスをしているものの、実際のところは、「午前中いっぱいは、要請があれば動かせる」という状態です。当然、「救急車」なんかはこの対象になります。そして、このことは事前に、地元消防署にも伝えておきました。

「救急車騒動その1」・・・午前10時頃に「救急車」が来ました。これがまた、通報者が「サイレンを鳴らされると恥ずかしいから静かにやってきて」と言ったらしく。(よく、ホテルとか旅館なんかで急病人が出たときは、他の客に気付かれないように、こういうことをする) マンションに近づいた時点でサイレンを切ったらしいのです。私はその時は、屋上にいまして、「このマンションに救急車が来た」というのには気が付きませんでした。清掃員は救急車が来たことに気づき、「何号室の住民が呼んだんですか? 部屋によって東棟と西棟に分かれていて、エレベーターも違いますよ」と丁寧に質問したのですが、アホな救急隊員共は、その声も聞かずに、「個人情報だから、あんたには関係ない」と言い放ったそうで、勝手に中に入っていきました。
そこでエレベーターに乗ろうとしたら、バリケード状態ですから、当然、乗れないわけで。「だめだ、工事中だ。ストレッチャーは無理だ。車に戻って、袋式担架に変えよう」といったん車に戻ります。そして、その袋式担架を持って、隊員は東棟の階段を登ります。でも、その時の通報者は「西棟の人」だったのです。隊員はあわてふためいて、しかたなく、清掃員に「908号室はどこですか?」とようやく聞きました。そこで、清掃員は「908号室は西棟の部屋で、この建物ではない」と説明し、かつ、「今日の午前中までは、緊急要請ならば、エレベーターを動かすことはできる」という重要なことを救急隊員に伝えることができました。
そして、隊員は再び車に戻り、再度、ストレッチャーを持ち出します。その間に、清掃員は私に電話連絡し(このエレベーター工事期間中は、お互いに、常に携帯電話を持ち歩き、なにかあったらすぐに電話連絡するように、二人で決めていました。なお、私物携帯ですから、通話料は自腹になります)、私はすぐにエレベーターの作業員に頼み、西棟のエレベーターを動かしてもらいます。
こうやって、なんとか、かんとか、908号室の急病人を病院に運ぶことができたのですが、毎度のことですが、救急隊員の人命軽視の仕事の姿勢には
反吐が出ます。この時も、この908号室の住民は、初期対応が遅かったせいかどうかはわかりませんが、残念なことに、2ケ月後に亡くなりました。救急車というのは1分1秒を争うものなのに、なにが「個人情報だから」ですか。

ふざけるな、バカ野郎!!! クソ公務員め! 人の命をなんだと思ってる!



「救急車騒動その2」
・・・その日の午後の早い時刻。この時点で、「エレベーターの各階の扉を外し始めた」という「もう、乗れない」という時間に、管理室の電話が鳴りました。相手は片言の日本語で「アカチャン アカチャン」とか言ってます。どうやら、803号室のラオス人の「ビエンさん」のようです。(仮名) 緊急事態っぽい口調のため、電話では無理、と判断し、すぐに階段を駆け上り、803号室へ向かいました。(年寄りにはつらいよ。ハーハーゼーゼー)
すると、部屋の中には、ビエンさん(奥さんのほう)の他に、もうひとり女性がいて、なんと、その女性のお腹が大きい。つまりは妊婦。というか、私はその女性のことは全然知らず。妊婦情報に関しては事前アンケートをしており、状況は把握しており、そのうちの1名は「実家に帰って出産します」ということで不在だったのですが。
先に結論を言うと、この女性は、ビエンさんの友人で、出産間際の身重な状態ではあるものの、この近くに用事があったついでに、「同国人の古い友だち」であるビエンさんに会いに来たのでした。来たのが朝の7時で、そのときはエレベーターは動いていたので問題はなかったのですが、今、現在は動いていないわけでして。そんな時間に、なんと、「産気づいてしまった」のです。
ラオス語であれこれ言われているのでよくわかりませんが、「とにかく救急車」ということだけはわかるので、私はすぐに自分の携帯から119通報。「その女性のお名前は?」とか電話口で聞かれて、知らないラオス人に名前を聞くのも大変で、「うるせい、とにかく早く来い!」と怒鳴りながらも、救急車要請を伝えます。
この時に、私も慌てていたのでボケちゃったのでしょう。「エレベーターが動かない」ということを伝え忘れてしまいました。もちろん、事前に、その件は消防署には伝えてありますが、午前中の例からして、伝わっていない可能性が高いです。
そこで、「最終手段でエレベーターを動かしてもらおう」と判断し、ドアの外へ。そこにはラッキーなことに、ちょうど作業員が作業中で。素早く事情を話し、「一部の階で、扉がありませんが、カゴ自体を動かすことはまだ可能です。そういうことであれば、動かしましょう」ということで、急遽動かすことに。
そんなこんなしている間に、救急車が到着。今度は通報したのが私自身だから、隊員も私の言うことを聞きます。看板には「エレベーターが使えない」となっているが、このためだけに動かしてもらえるから、エレベーターで行くぞ、と指示。(隊員は、エレベーター工事のことは知らなかった。やっぱり、公務員は使えないクソばっかりだ)
ところどころ、扉がない階があるという、異常な状況に驚く救急隊員ではあるが、無事に、ラオス人妊婦をストレッチャーに載せ、救急車へ。
あと1時間遅ければ、エレベーターは使えなかったという、本当のギリギリのタイミングで、冷や汗モノでした。

※後日談:その妊婦は搬送先の病院で無事に出産しました。良かった。

そんなこともあったので、「これじゃ、昼休みに外出もできねえな」と考え、工事期間中は、昼休みは事実上なしで、管理室のカーテンを閉めることもできず、こそこそと弁当を食べる毎日になりました。もちろん、残業代も出ません。正直なところ、エレベーター会社から給料をもらいたいくらいです。


<3日目 本当に本当にエレベーター使えません>
そんな騒動があった2日間が過ぎた3日目。消防署の救急車ではない、
「民間救急車」というのが、マンション前の道路に止まりました。
その車から車椅子で出てきたのは、902号室の麻田さん(高齢単身女性 仮名)。介護職なのか、つきそいの女性が2名いました。この麻田さんというのは、半年前に、「自分一人で蛍光灯を交換しようと、踏み台に登った際に転倒し、大腿骨複雑骨折とかで、長期入院になった人でした。
長期入院者の退院。盲点でした。
当然、その人への連絡などしていません。
その人が、今日、退院して帰ってきたのです。本人も付き添いの介護の人も、「今、エレベーターが使えない」ということを知らず、一同唖然。・・・・・

まさか、これを本当に使うことになるとは・・・・

介護の女性はふたりとも、小柄でひ弱な体型でした。彼女たちも当然のように「管理人さんがかついでくれるのよね」という視線を送ってきます。民間救急車のドライバーの男性は、規則なのか、患者に触ってはいけないらしく、男は私一人ですから、私がやりましたよ、尾瀬の歩荷さんみたいに。
私が背負子を担ぎ、それに麻田さんを載せ、シートベルトみたいに結びつけ、周囲を3人の女性(介護2名&清掃さん)で囲んで、パイプ部分を持ち、その状態でゆっくりと階段を登りました。
幸い、麻田さんの体重は40キロ台のようで、なんとかなりました。それでも、階段をのぼるというのはなかなかに大変で、9階まであがるのに、ずいぶん時間がかかりました。二宮尊徳の気持ちがよくわかりました。
しかし、困ったのは3階を越えたあたりで、麻田さんが「怖いよ~」と怯えだしたことです。背中に背負われていることで、普通に階段をのぼるよりも、目線が意外と高いので、階段の柵なんかも低く見え、その分、「何かあったから地面までまっさかさま」という恐怖を感じるのでしょう。「怖いよ、怖いよ」と怯えるのです。周囲に3人が囲んでいますから、「大丈夫大丈夫」と安心させようとしますが、なかなか信用してもらえず、本人はぐずります。本人が体を動かすと、こっちも不安定になり、余計に危険です。ぐずることで時間もかかり、こっちの体力も消費します。しょうがないので、麻田さんの頭に私の持っていたタオルを巻きつけ、目隠しをして、「大丈夫だ、ちょっとだけガマンしてくれ!」と気合を入れて、9階まで登ったのです。
これで無事、麻田さんは自分の部屋に戻ることができました。ただ、その後、「エレベーターが使えない」ってことを初めて知った介護の人たちと、今後の「ホームヘルプ」とか「買い物」とか「通院」の予定とかの相談をしましたので事後処理も大変でした。(結局、通院は1回飛ばすことになりました)

この日は、精神的にも肉体的にも本当に疲れて、帰りに、駅前の「マッサージ」に5980円払って、体を揉んでもらいました。もちろん自腹です。トホホ。


<4日目 大雨 涙雨>

この日は、救急車騒動はないものの、予想どおり、階段のあちこちに水たまりができ、それに対する苦情が殺到。大雨がずっと降り続いているのだから、我々がスイーパーなどで水たまりを除去しても、また、すぐに水たまりになってしまうわけで、そういうことをしても意味が無いんだが、フロントに相談すると、「雨の中、管理員と清掃員が一生懸命に雨水を処理している姿を見れば、苦情もでないから」ということで、「意味ねえだろ」と思いながらも、外見上、「必死に、住民のために、仕事をしている」ように見せるため、雨合羽を来て、清掃員さんと二人で、ずっとスイーパーやモップで雨水を除去する作業をしていました。
「ご苦労様です」とねぎらいの言葉をかけてくれる住民もいれば、「こんなに大雨なんだから意味ねえじゃん!」と、けなす住民もいてちょっと悲しかったです。ただ、まあ、ずっと階段に張り付いていたので、万一、住民の誰かが滑って転んでも、すぐにそれに気づいて助けることができるし、危なそうな人にはいっしょにくっついて階段を昇り降りして、そういう介助ができたのでよかったと思います。
ただ、ずっと管理室を離れていたので、「何度電話しても出ねえじゃないか!」と翌日、いろいろな人に怒られました。

この「雨」は、期間中にあと2回降り、夜間に雨が降った翌朝は「とにかく雨水の除去が最優先」と朝イチにすぐに水を除去したり、とにかく、大変でした。ただ、がんばったせいで、「転倒事故」は一度も起きませんでした。


<7日目と14日目と19日目 駐車場の移動処理>

期間中の3回ほど、「大型の重機がマンション内に入るため、契約駐車場に止めている住民の駐車車両を外部に一時移動しないといけない」という事態が発生しました。エレベーター更新工事というのは、たくさんの大型資材が必要ですし、特に、屋上部分にエレベーター機械室がある関係で、「クレーン車で、屋上に資材を運ぶ」という作業が不可欠なのです。
この作業の予定ははっきりしているものの、「大雨が降ったら延期します」という性格のものなので、ずっと以前から、「*月**日は、外部のどこかのコインパーキングに移動して下さい」と日時指定することができないのがつらかったです。「移動してもらう予定です」という予告文書しか出せませんでした。
さて、こういう事務処理は、エレベーター会社がやってくれるものと思っていた私ですが、これまた、「うちではやりません。工事だけの契約しかしてませんから」ということで拒否され。筋から言うと、管理組合の役員がすべきことですが、これもするわけがなく。結局、これも私がやらされました。
工事開始の1週間くらい前に、マンション周辺の「コインパーキング探し」をしました。なるべく近くて、料金が安くて(費用は管理組合が払いますから)、出し入れしやすいものを見つけないといけません。そして、それを「地図」としてまとめ、移動対象者に事前に渡しておきました。
こうやって、完璧な
「近隣コインパーキングmap」ができたんですが、ところが・・・・・ まいったことに、うちのエレベーター工事開始と同時期に、近所でも「ビルの新築工事」が始まっており、その工事の関係者が、近隣コインパーキングを利用しており、「え? これじゃ、うちの住民が一時移動する駐車場がないじゃないか?」とパニクリました。急遽、範囲を少し広げて、再度近所を探索し、あらためて「近隣駐車場マップ」を作り変えました。これはほんと、疲れたなあ。なにしろ、実際に工事が始まっている期間だから、マンションから外に出るのはなるべく避けたかったので、貴重な昼休みを、この探索時間に充てました。
こうやって、準備万端にして、かつ、天気予報などを見ながら、2日前、と前日に、その住民に直接、「明日はよろしくお願いします。朝8時までには移動しておいて下さい」とお願いします。なかには、「その日は、遅番なんで、朝10時まで寝ているつもりなんだけど」 「え? そうなんですか? だったら、前の晩に移動しておいて下さい」「料金がかさむけどいいの?」「しょうがないです」なんてことも話し合わないといけません。

※だいたい、管理組合からの直接発注なのに、こういう事務作業を全部管理人に押し付けるってひどくない? っていうか、普通は、これだけの大プロジェクトであれば、役員の中で「エレベーター更新工事担当」とか任命すべきでしょ。それもないんだからな、スラム化マンションは本当に辛いよ。


こんなことをしても、「あ、ごめん、移動するのを忘れていた」とか「え? 移動しないといけないの?」といった「とぼけた住民」が必ずいるものでして。会社に出勤している、その住民を、その会社がわりと近所なので無理言って、「今から会社を抜け出して、車を移動してくださいよ」と泣きついて移動してもらったりしました。
移動対象車両の住民には「ちゃんと伝えないおまえが悪い」と怒られ、クレーン作業の関係者からは「なんでちゃんと移動させておかないんだよ」って怒られ。なんで管理人が挟まれて怒られるんだよ。なんなんだよ! 馬鹿野郎!

それでもって、この「コインパーキング料金」は、あとで住民が領収書を持ってきたら、その場で現金を渡すという手はずになっていて。そのお金は、私が一時立て替えるという状態。これもおかしいでしょ??? 全部で4万円近くになっちゃったよ。
(※駐車場料金を自腹で払うのなら、「最大24時間まで1200円」とかいう安いところを選ぶのに、「金は組合が払うのであれば」と高い料金のところに止める人もいて、人によって払う金額が全然ちがってました。「組合が払う」って言っても、それだって、もとは自分たちが払った修繕積立金なわけなんだから節約を考えてほしいなあ。これじゃ、まるで、東京五輪組織委員会の森のバカみたいじゃないか。他人の金など湯水のように使いまくるクソ野郎) この出納業務も大変でした。

<工事時間は全然予定通りではない>
期間中は毎日、職人さんの方で「本日の工事内容」「何時から何時まで工事します」という予告がなされます。ホワイトボードに書かれるのです。しかし、この「時間」が非常にルーズでして。
これも、「下請け」「請負契約」のせいだと思うのですが、普通の正社員による工事だと、労働時間がしっかり決まっているのに、このエレベーター工事は孫請けの職人さんが請負契約でやっているため、彼ら自身は「自営業者」であり、労基法は関係ないのです。それに、基本、「1台=1名」で作業しているため、自分のやりたいようにやります。「キリがいいところまでやって、今日は終わらせよう」と思って、夜8時までやったり、「昨日はがんばったから、ちょっと朝寝坊しよう」と、工事開始の時刻が遅くなったり、とにかく、「マイペース」なんです。このため、住民から、「夜だぞ。まだ、工事をやっているのか、うるさいぞ!」って苦情を受けたりしました。


◆この間、「荷物運ぶの手伝ってよ」といった依頼は多数あり。リュックサックしょって、頑張りました。


<終了間際 小さなトラブル>

工事も日数が経過してくると、私も慣れ、住民も「階段利用生活」に慣れ、「疲れたよ。早く終わってよ」と愚痴をこぼす住民もいれば、逆に「階段を利用すると健康にいいねえ」なんて喜んでいる人もいたりして、とにかく、わりと順調に進んでいきました。
さて、最後の方になると、いろいろと「電気配線工事」なんかをしているわけですが、ここで。
「管理室にある、非常用インターホンにうまくつながらない」
「もともとあったエレベーター内の防犯カメラを移設したが、うまく作動しない」
なんていうトラブルがありまして、ちょっとごたごたしました。
カメラはちゃんとつながったものの、私が最終点検したら、「お~い、画面が上下逆さまだよ」なんていう不具合もあり、それも直させて完了です。


<本体工事終了 新エレベーター稼働開始>
工事の最終日というのは、「片付け」「撤収作業」のための日なので、実際の工事は、最終日の1日前に終わりました。公的機関の最終審査にも合格し、「では、予定よりも1時間早いですが、新エレベーターを稼働開始します」となりました。
これで「良かった良かった。万々歳!」となるはずですが、エレベーターが新しくなり、夕刻の「帰宅した人が次々にエレベーターに乗る」時間になったら、「非常警報」が何度も何度も鳴るのです。
最初は「何事か!」と現場に急行しますが、なにも異常はなく、皆さん普通に乗っています。工事担当者と3人で「なんでだろう?」と、テツトモのように悩んでおります。あまりにも、警報が鳴るので、念のため、防犯カメラの記録映像を見たら、わかりました。



エレベーターに乗り込んだ人の「10人中8人」が、「非常ボタン」を押すのです。


「え? なんで?」と思って、自分でエレベーターに乗ったらわかりました。ちょうどその時、かごの中でいっしょになった住民も非常ボタンを押しました。なぜかというと、「新しいエレベーターの非常ボタンの位置」が、「以前のエレベーターの”閉めるボタン”の位置」と、ほぼ同じなのです。
つまり、
皆さんが今までの習慣で、エレベーターに乗って「閉める」のボタンを押したつもりが、それは「非常ボタン」なのです。

 人間は高齢になるほど、「身についた習慣は変えられない」ものでして、操作盤がガラリと変わっても、いつもの癖で「閉める」のつもりで「非常」を押してしまうのです。そして、それが全部、「非常警報」になってしまうわけで、管理室は警報が鳴りっぱなしなのです。
 なお、「そういうことは、エレベーター会社の緊急受付センターも大変なことになっているのでは?」と皆さんはお思いでしょうが。敵もさるものでして。あの「非常ボタン」というのは、「緊急時はこれを押し続けて下さい」と書いてあるように、実は、「このボタンを5秒以上続けて押すと、緊急センターにつながるようになっている」というシステムでして。「閉まる」のつもりで、ポンと押しているだけでは、管理室の非常警報は作動するが、エレベーター会社の緊急センターには通報されないのでした。

 これを見た、作業員は、「じゃあ、これをつけましょう」と、

「非常ボタンカバー」なるものを取り出してきました。そして、「緊急時以外は押さないで下さい」というステッカーも持っていました。はなからこういう事態を予測していたのです。

「それを早く言ってよ~」とサンサンのクラウド名刺サービスの松重聡さんのように愚痴った私です。これで警報は収まりました。


<最終日 撤収作業>
「三方枠の塗装が落ち着くのには3週間かかる」
「これで終わった。良かった」と安心した私ですが、そうは甘くはありませんでした。エレベーターの扉と扉周辺の鉄部分の塗装が、まだ乾いていないのです。「完全に乾くには3週間程度かかります」とのこと。それを最終日の今日、初めて言ってきたのです。「乾くまで待てばいいじゃん」って思うかもしれませんが、実は明日、引っ越しがあるのです。明後日からは大規模リフォーム工事が始まります。
というのも、「そういうものはエレベーター工事期間中は避けて下さい」とお願いしていたためで、「工事が終わったらすぐにやりたい」と、皆さんが待っていたのです。しかし。こういう作業には「エレベーターの養生」が不可欠です。養生とはつまり、クッション材をエレベーターの扉とか枠に貼るわけでして。「塗装が乾くまでは何も貼れませんよ」って言われたら、どうすればいいんですか? 養生しなかったら、せっかくの新品のきれいなエレベーターがすぐに傷だらけになってしまいます。
このため、工事が終わったのに一安心できず、その後の3週間、引っ越しやリフォーム工事の時に、業者がエレベーターを傷つけないかどうか、じっくりとその場で注意するという神経のすり減る作業が加わってしまいました。

「防犯カメラのステッカーも必要&貼れない」
それから、これも、気が付かなかった私が悪いのかもしれませんが、エレベーターの中や外側の鉄部に貼ってあった「防犯カメラ録画中」というステッカーも、更新工事と同時に全部はがされてしまいました。これも、防犯カメラ業者に頼んで、新しいものを持ってきてもらわないといけません。そういう連絡事務もしないといけません。でも、ステッカーをもらってもしばらくは貼れないわけで。参ったなあ。



■工事期間を終えて思ったこと
正直、疲れ果てました。通常の、非常に忙しい管理人業務にプラスされた「本来は管理人の仕事ではない」仕事をしているわけで、これは物理的にも無理です。やはり、期間中は人材派遣でもなんでもいいですから、誰か一人、別の「ヘルプ要員」が欲しかったと思います。そういう人たちは「責任」の問題で、「住民の体に触ることはできない」のかもしれませんが、体に触れなくてもできる仕事はいっぱいあるし、私が現場に行っている時に、管理室にいて留守番をしてもらうだけでも助かります。逆に言うと、そういう人件費も加算して、エレベーター更新の積算をして欲しいと思います。それほど大変なことなんです。
あと、今回は自腹の携帯電話を使いましたが、管理室外にいることが多いので、携帯は必需品です。会社のほうで支給すべきでしょう。

追記 「ゴミ出し」について

体の不自由な人にとって、ゴミ出しは重労働です。まして、エレベーターが使えずに階段だけとなると「不可能」になる人もいました。
この件、市役所の福祉の人に聞いてみたら、「特別な事情がある場合は、通常のゴミ収集とは別に、清掃局の職員が、その住民の部屋まで出向いてゴミを回収することが可能」とのことで、これを利用させてもらった高齢者住民もいます。
実際に回収に来た職員は最初「え? 階段なの? 聞いてないよ」と怒ってましたが、私の方で、こういう時用に用意していた「缶コーヒー」(自腹で購入)を渡してなだめました。
その他、ホームヘルパーさんとかが通ってきている部屋に関しては、一軒一軒と打ち合わせをして、「本当の回収の曜日と異なる日でも、ヘルパーさんの出勤日に合わせてゴミを出してもいいですよ。管理人が一時預かって保管して、正しい曜日の時に出し直します」ということにしました。集会室の中の一部を「ゴミの仮設置き場」にして対応しました。
その他、実際に「大変そうにゴミを持って階段を降りている人」を見たら手助けする、など、臨機応変にいろいろと働きました。管理人、超多忙でした。

なお、体が不自由ではなくても、「ゴミを持って階段を降りるのはめんどくさい。いったんベランダに仮置しておこう」と考えた人もけっこういたようで、エレベーターの工事が終わった日の翌日の「ゴミ収集日」の時は、いつもの倍以上の量のゴミが捨てられていて、びっくりした記憶があります。

 






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